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ロボットドクター、アリシアのドタバタ診療日誌
アリシア2234-LMN、警戒する
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ここ明帆野にほとんどロボットがいないことで、アリシア2234-LMNは、到着した時点から警戒していた。人間の行いを抑制するロボットがいないというのは、それだけでリスクが高くなるからである。
しかし、館雀立志は、ただ不愉快そうに茅島秀青を睨み付けるだけで、具体的に何か行動を起こそうとはしなかった。
視線はあくまで主人である秀青に向けながらも視界の隅には確実に館雀を捉えているアリシア2234-LMNの解析でも、館雀の体にこちらに向かってくるような力の配分は見られない。なので、<要注意>ではあるものの<要警戒>にまでは分類されなかった。凶器を手に向かってくるようなことがあればそれこそ瞬時に<戦闘モード>に切り替わることさえあるが、どうやらそこまでのことはないようだ。
草刈り用の鎌なども携帯しているものの、それを振り上げるような予備動作も見られない。
そのうち、
「ちっ……!」
小さく舌打ちしながらも自身の作業に戻るのが見えた。アリシア2234-LMNの要注意のマーキングは外れなかったものの、時折、マーキングが外れたりもする。つまりその境界線あたりまで下がったということでもある。
秀青はそこまでは承知しておらず、やはり昆虫を追っていた。しかも、宿に向かう方に。
そこからは一気に進み、館雀の姿も見えなくなる。
「……」
ようやく<要注意対象>から距離を取れたことで、アリシア2234-LMNも完全に秀青に視線を戻す。
こうしてロボットは、人知れず人間達を守っているのだ。一切の見返りも求めず。今の人間の社会は、こういう形で成り立っているのである。
それでも、AIやロボットを信じきれない層は一定数存在する。明帆野は、そういう人間達のコミュニティだった。
それから十五分。チェックイン予定時刻を三十分過ぎて秀青とアリシア2234-LMNは、明帆野唯一の宿泊施設<明帆野荘>へと辿り着いた。
「いらっしゃいませ」
玄関に現れた秀青とアリシア2234-LMNに気付き、受付に座っていた若い女性が立ち上がり、二人(正確には一人と一機)を出迎える。
先ほどの館雀とは正反対の、朗らかな笑顔だった。けれど、アリシア2234-LMNは察する。
『この方は……』
彼女の名前は、
<館雀美月>
先ほどの館雀立志の妹であった。明らかに血縁関係を窺わせる外見上の類似点を、アリシア2234-LMNは検出していた。耳の形や目元等。とは言え、美月からは、こちらに対する嫌悪感や敵愾心は感知できない。ゆえにアリシア2234-LMNも、ただ秀青の傍で佇んでいただけなのだった。
しかし、館雀立志は、ただ不愉快そうに茅島秀青を睨み付けるだけで、具体的に何か行動を起こそうとはしなかった。
視線はあくまで主人である秀青に向けながらも視界の隅には確実に館雀を捉えているアリシア2234-LMNの解析でも、館雀の体にこちらに向かってくるような力の配分は見られない。なので、<要注意>ではあるものの<要警戒>にまでは分類されなかった。凶器を手に向かってくるようなことがあればそれこそ瞬時に<戦闘モード>に切り替わることさえあるが、どうやらそこまでのことはないようだ。
草刈り用の鎌なども携帯しているものの、それを振り上げるような予備動作も見られない。
そのうち、
「ちっ……!」
小さく舌打ちしながらも自身の作業に戻るのが見えた。アリシア2234-LMNの要注意のマーキングは外れなかったものの、時折、マーキングが外れたりもする。つまりその境界線あたりまで下がったということでもある。
秀青はそこまでは承知しておらず、やはり昆虫を追っていた。しかも、宿に向かう方に。
そこからは一気に進み、館雀の姿も見えなくなる。
「……」
ようやく<要注意対象>から距離を取れたことで、アリシア2234-LMNも完全に秀青に視線を戻す。
こうしてロボットは、人知れず人間達を守っているのだ。一切の見返りも求めず。今の人間の社会は、こういう形で成り立っているのである。
それでも、AIやロボットを信じきれない層は一定数存在する。明帆野は、そういう人間達のコミュニティだった。
それから十五分。チェックイン予定時刻を三十分過ぎて秀青とアリシア2234-LMNは、明帆野唯一の宿泊施設<明帆野荘>へと辿り着いた。
「いらっしゃいませ」
玄関に現れた秀青とアリシア2234-LMNに気付き、受付に座っていた若い女性が立ち上がり、二人(正確には一人と一機)を出迎える。
先ほどの館雀とは正反対の、朗らかな笑顔だった。けれど、アリシア2234-LMNは察する。
『この方は……』
彼女の名前は、
<館雀美月>
先ほどの館雀立志の妹であった。明らかに血縁関係を窺わせる外見上の類似点を、アリシア2234-LMNは検出していた。耳の形や目元等。とは言え、美月からは、こちらに対する嫌悪感や敵愾心は感知できない。ゆえにアリシア2234-LMNも、ただ秀青の傍で佇んでいただけなのだった。
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