我が娘が風呂上りにマッパで薄暗い部屋でPCの画面を見ながら不気味な笑い声を上げてるんだが?

京衛武百十

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それでも私は生きていく

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観音かのんも二十歳になって、法律上は<大人>になって、だけど当面の間は家を出て行く予定もなくて、結婚なんて考えてもいなくて、ダンナとの思い出が詰まったこの家で、二人で生きていく。

きっと、ダンナと出逢ってからの時間よりもずっと長く、長く……

そう考えるとたまらなくなるけど、胸がぎゅうっとなる気がするけど、でも、それ自体が<生きる>ってことなんだと思う。

私の両親については、年老いたら施設に入ってもらうくらいはするつもりだけど、寄り添って面倒を見る気にはなれない。だってあの人達は、私に寄り添ってくれなかったから。

あの人達が私を学校に通わせてくれたことは、施設に入れることで。

あの人達が私を養ってくれたことは、老後の生活費を援助することで。

それでチャラでしょ。私が大学を卒業して就職して自活し始めるまでの二十二年以上の時間、死なせないようにはするつもりだよ。

私の話なんて聞いてくれなかったから、話を聞く気にはなれない。

私と向き合ってくれなかったから、向き合う気にもなれない。

自分達がしたことが、自分に返ってくる。

そういうもんでしょ?

でも同時に、観音かのんに対して私がしたことを返してもらおうとも思ってないんだ。私が彼女に対してしたことは、私がしたかっただけだからさ。



そして今日も、会議で帰りが遅くなった。灯りが点いてない家の玄関を開けると、リビングから、不気味な笑い声。

だけどなんだかすごくホッとする。

『ああ、帰ってきたんだな。我が家に』

って思う。

すごく嬉しい。

「ただいま」

声を掛けると、

「おかえり~」

私の方を振り向くこともなく応える。なのに、それがすごくあたたかい。

『顔を見て、目を見て、話してくれる』

そういう<形>も大事なんだろうとは思うけど、実際には、<気持ち>が向いてるかどうかが大事なんだって教わったよ。形だけを、上辺だけを、どんなに取り繕ったって、そこにちゃんと<気持ち>が乗ってなくちゃ、相手には届かないんだ。

この観音かのんの態度も、<形>こそはとても褒められたものじゃないけど、私を受け止めてくれてる気持ちがちゃんとそこにあるから、それが分かる関係だったから、安心するんだ。

「晩御飯は食べた?」

私が訊くと、

「まだ~」

という返事。

「うん、しょうがないなあ」

「てへへ、ごめ~ん♡」

「冷凍ナポリタン? 冷凍カルボナーラ? 冷凍ラーメン? 冷凍うどん?」

「う~ん、今日はラーメンの気分かな」

「分かった。すぐに用意するね」



他人が見たら本当に呆れるような、だらしない暮らし。だけど私と観音かのんにとっては、この一時ひとときこそが癒し。

他人に褒められたいから、評価されたいから、認められたいから生きてるんじゃない。この<家庭>を堪能したいから生きてるんだ。

ダンナが残してくれたこの家庭を、ね。

ありがとう……

愛してる……

あなたに出逢えて本当に良かった……




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