72 / 93
変化
しおりを挟む
自分が心まで怪物になっていくのを感じながらも、僕はまだ、
『助けなきゃ』
とは思うことができた。だから今はただ、淡々と自分にできることをするだけだと思った。
強引に瓦礫の隙間に体を捻じ込んで、ぐいと体を起こして瓦礫を押しのけて隙間を作り、崩れてきそうなそれは触角で弾き飛ばして地上に上がれるルートを確保すると、僕はもう、中の人間達の確認をすることなく次へと移動した。
自分の姿を見せると不安がられるかもしれないと考えたから。それに、僕は医者じゃない。怪我とかしてる人がいても治療なんてできないし。
……いや、違うな……
そんなの、僅かに残った僕の人間の部分が体裁を整えるために作りだしたただの<言い訳>だ。
本当は、どうでもよかったんだ。『助けなきゃ』と思いながらも、
『助かっても助からなくても、どうでもいいや……』
って思ってたんだ。
それでも、ただの上辺だけでも、『助けなきゃ』と思えてる間は、そうしようとも考えた。だから人間の声が聞こえるとそこに行って瓦礫を押しのけて、地上に上がれるルートを作ったりした。
すごく頑丈な地下の、浅いところは衝撃波が伝わってみんな死んだみたいだけど、深いところにいた人達のところまでは衝撃波は届かなかったり弱ってたりして、助かった人もいたみたいだ。
なんてことをしているうちに、数百人単位の人間の生存が確認できた。
だけど僕にはもうどうでもよかった。どんどんどんどんそう思えてくる。
そして、何回目かのそれが終わって、助けを呼ぶ声が聞こえても、僕はそちらに向かう気にはなれなかった。僕が手を貸さなくても助かる時は助かるだろうし、そうじゃなければ死ぬだけだ。
『……死ぬのなんて、大したことじゃないし……』
そんなことも思ってしまう。
『僕だって死んだのに、こうして生き返らされた。生き返らされなくても、<量子情報体>とか言うのになって、意識だけで存在し続けるらしいじゃないか……
くだらないよ……』
でも、吉佐倉さん達のことだけは放ってはおけなかった。
彼女達がいた公園跡に戻ると、既にお風呂から上がって一息ついているところだった。
みほちゃんも気が付いたみたいだ。
けれど……
「ママ、きょうはあめがいっぱいだね」
と、頭を拭かれながら吉佐倉さんに話しかけていた。
『……まさか、記憶が……?』
その様子を見ただけで、僕は察してしまった。
幼いみほちゃんは、このあまりの出来事を受け止め切れなくて、帳尻を合わせるために自身の記憶を都合のいいように書き換えてしまったのだと。
『助けなきゃ』
とは思うことができた。だから今はただ、淡々と自分にできることをするだけだと思った。
強引に瓦礫の隙間に体を捻じ込んで、ぐいと体を起こして瓦礫を押しのけて隙間を作り、崩れてきそうなそれは触角で弾き飛ばして地上に上がれるルートを確保すると、僕はもう、中の人間達の確認をすることなく次へと移動した。
自分の姿を見せると不安がられるかもしれないと考えたから。それに、僕は医者じゃない。怪我とかしてる人がいても治療なんてできないし。
……いや、違うな……
そんなの、僅かに残った僕の人間の部分が体裁を整えるために作りだしたただの<言い訳>だ。
本当は、どうでもよかったんだ。『助けなきゃ』と思いながらも、
『助かっても助からなくても、どうでもいいや……』
って思ってたんだ。
それでも、ただの上辺だけでも、『助けなきゃ』と思えてる間は、そうしようとも考えた。だから人間の声が聞こえるとそこに行って瓦礫を押しのけて、地上に上がれるルートを作ったりした。
すごく頑丈な地下の、浅いところは衝撃波が伝わってみんな死んだみたいだけど、深いところにいた人達のところまでは衝撃波は届かなかったり弱ってたりして、助かった人もいたみたいだ。
なんてことをしているうちに、数百人単位の人間の生存が確認できた。
だけど僕にはもうどうでもよかった。どんどんどんどんそう思えてくる。
そして、何回目かのそれが終わって、助けを呼ぶ声が聞こえても、僕はそちらに向かう気にはなれなかった。僕が手を貸さなくても助かる時は助かるだろうし、そうじゃなければ死ぬだけだ。
『……死ぬのなんて、大したことじゃないし……』
そんなことも思ってしまう。
『僕だって死んだのに、こうして生き返らされた。生き返らされなくても、<量子情報体>とか言うのになって、意識だけで存在し続けるらしいじゃないか……
くだらないよ……』
でも、吉佐倉さん達のことだけは放ってはおけなかった。
彼女達がいた公園跡に戻ると、既にお風呂から上がって一息ついているところだった。
みほちゃんも気が付いたみたいだ。
けれど……
「ママ、きょうはあめがいっぱいだね」
と、頭を拭かれながら吉佐倉さんに話しかけていた。
『……まさか、記憶が……?』
その様子を見ただけで、僕は察してしまった。
幼いみほちゃんは、このあまりの出来事を受け止め切れなくて、帳尻を合わせるために自身の記憶を都合のいいように書き換えてしまったのだと。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる