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贅沢ってもんか

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イノシシみてえな獣を仕留めたヴェロキラプトルみてえな獣が群がって貪っていく。

それこそ腹を食い破ってそこに頭を突っ込んでガツガツとだ。

正直これも、今の人間ならまともに見てられねえのも多いだろうな。自分が口にしてるもんがどうやって作られてるかってえのを知らねえ奴も多いだろ。

俺にゃそれがいいことなのか悪いことなのかなんざどうでもいいけどよ、別に知ってて悪りいことじゃねえと思うぜ。

少なくとも俺は、こんな風にして他の命を食らって生きてる以上は、てめえの命も他の奴の命も雑に扱っていいとは思えねえしよ。

もっとも、それと、

『可哀想だから食べられない』

ってのとは別の話だとは思うけどな。自分に食われる他の命が可哀想だってんなら、てめえが他の命に食われてやりゃいいじゃねえかとしか思わねえよ。

俺はそういうのは真っ平ごめんだけどな。わざわざ食う必要がねえんなら食わねえにしても、食う時にゃ容赦しねぇよ。

とは思うぜ。

で、イノシシみてえな獣がほとんど骨だけになったのを見届けた俺は、すぐ脇の木の幹に止まっていたトカゲみてえなのを捕まえて頭からバリバリと食ってやった。

ちゃんとさばいて火を通してやった方が美味えんだけどよ、なんか慣れちまってこれでもぜんぜん構わねえんだよな。

てか、これはこれでオツなもんだ。悪くねえ。

それから見回りを続けていると、前に俺がかじった蔓がまたすげえ伸びてるのに気付いた。

「なるほど。この勢いで繁殖されたらそれこそ森が潰れちまう。だからどんどん使ってやらねえといけねえって感じか」

まったく。よくできてやがると感心するぜ。

だからまたその蔓をかじって水を出させてゴクゴクと飲む。

最初は気付かなかったけどよ、この水、微妙に甘えんだよな。かといってすぐ分かるくれえにしつこい甘さじゃねえから、ちょうどいい。これでもっと冷えてりゃそれこそ言うことねえんだけどよ。そこまではまあ、贅沢ってもんか。

そんな調子でぐるっと見回ってそれからテントってえか、もう<巣>ってえ感じのに戻ってきたら、蟷姫とうきもちょうど狩りから戻って、

「……」

血まみれの顔を寄せてきやがった。

『舐めてくれ』

ってえこったな。だから俺もリクエストに応えて、顔についた血を舐め取ってやった。最近、蟷姫とうきはこれがお気に入りみてえでな。顔を舐めてやってると気分が上がってきて、そのまま俺を求めてくる。

俺もそんな蟷姫とうきが可愛くてよ。そのままテントにも戻らずヤるんだ。

蟷姫とうきがいるから獣も寄ってこねえし。

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