オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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愉悦

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そしてインパラ竜インパラが逃げ去った後で、ジョーカーは捕らえた幼体こどもをゆっくりといただく。

「!?」

すると気配を察し、ジョーカーは頭を上げた。視線の先にはインパラ竜インパラ成体おとな。どうやら一旦は逃げた母親が、我が子がいないことに気付いて引き返してきたらしい。

けれど、襲われた時には生きるために必死に抵抗もするインパラ竜インパラだが、それが恐ろしい一撃も生み出すが、さすがに肉食獣ほどの攻撃衝動を持たないがゆえに、我が子が食われていくのを見ながらも、何もできなかった。完全に死んでいることを察したからというのもあるかもしれない。我が子に助けを求められれば違っていた可能性もあるとしても、今はそうではなかった。

警戒はしつつもジョーカーもインパラ竜インパラ幼体こどもを貪ることをやめず、やがていつの間にか母親らしきインパラ竜インパラもいなくなっていた。それに気付くと、ジョーカーの中に何ともドロドロとした感覚が湧き上がり、愉悦を覚えた。

『母親の前で子供を食らう』

ことに激しく興奮したようだ。そして、

「ヂッ! ヂッ! ヂッ!!」

ジョーカーは『笑った』。本来は笑うことなどないはずのオオカミ竜オオカミが笑ったのだ。己の行いに無上の悦びを得たのだろう。



これを機に、ジョーカーは『子供を殺す』、特に、

『母親が見ている前で子供を殺し食う』

ことを意図的に狙うようになった。

本来、普通の野生の獣にこの類の<悪意>は芽生えない。どれほど凶暴な種であっても、<生存戦略>が行動原理そのものであって、本質は臆病で危険は避けるものなのだ。しかし時折、『悪意がある』としか思えない振る舞いを見せる個体が現れることもある。この時のジョーカーもそうだった。

イタチ竜イタチを囮にインパラ竜インパラガゼル竜ガゼルの群れをパニックに陥れ逃げ遅れた子を捕らえ、食った。それで母親が戻ってきて見ていたりしたらそれがもう美味くて美味くて、たまらなかった。

こうしてますます体を大きくし、生まれてから二年もすればもう成体おとなと変わらない体と力を得た。インパラ竜インパラガゼル竜ガゼルの群れを襲う時も、自分だけで囮役も兼ねてみせた。

老いて動きが鈍くなった個体がいても無視して幼体こどもだけを狙った。時に反撃を食らって傷付いたりもしたが、ジョーカーはまったく懲りるということがなかった。

痛め付けられれば執拗にその群れを狙い、やはり幼体こどもを襲う。そのために反撃してくる成体おとなを迎え撃ち殺しもした。なのに成体おとなは、その時には食わない。後で腹が減ってきたら戻ってきて食うこともあるものの、やはり狙うのは幼体こどもなのだった。

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