オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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当然の<戦略>

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自身の群れの幼体こどもを殺され、ジャックは憤った。その子はジャック自身の子ではなかったものの、己の群れの幼体こどもは彼の子供も同然であるがゆえに、彼の怒りも本物だった。

しかし、襲ってきたレオンの方も、実は追い詰められていたのだ。今回の異変により獲物が激減。仲間はみな飢え、幼体こども達は次々と死んでいく。状況はジャック達と全く同じだった。だから生きるために襲ったのだ。闇にまぎれて潜んでいたのも、レオンの側からすれば当然の<戦略>だ。レオンは夜行性であるがゆえに。

だからジャックも、それ自体を<卑怯>だとは思っていなかった。ジャック達だって草に隠れてインパラ竜インパラガゼル竜ガゼルを狩ってきたのだから。単純に幼体こどもを殺されたことへの怒りだった。

ジャックは圧倒的な力でレオンを迎え撃つ。だが、レオンの方も後がないのだろう。強すぎるジャックは後回しにし、仲間を狙ってきた。これも当然の戦略ではある。

そして仲間の一頭が、三人のレオンに一度に襲い掛かられ、地面に倒れ伏す。

「ゴオアッッ!!」

ジャックはそれに対して飛び掛かり、またレオンを噛み殺した。けれど、倒された仲間も、レオンに頸椎を噛み砕かれ、断末魔の痙攣を起こしていた。

数の上ではジャック達の方が有利なはずなのに、ほとんど新月に近い細い細いっ三日月しか空にかかっていない今夜は、あまりに暗かった。正直、ジャックも、勘を頼りに戦っている状態であった。

それでも、ジャックがあるレオンを噛み殺すと、

「グアッ!」

途端に他のレオンも闇にまぎれて逃げ去ってしまった。どうやらボスを倒せたようだ。

こうして、ジャック達は、犠牲は出しながらもなんとか餌を確保することができて、飢えをしのいだ。

犠牲になった仲間と幼体こどもも含めてではあるが……

なのに、ジャック達には安堵している暇も与えてはもらえない。夜明け直前、またもテチチ竜テチチの群れが襲い掛かってきた。

これを、ジャックと、ジョーカーの兄と、ジョーカーとクイーンの子供達とで退ける。

これによりさらに餌は得たものの、明らかにジャックは疲弊していた。

夜が明けていつもなら活動を開始する時間になっても、ジャックは起き上がることができなかった。

そんな彼に、幼体こども達が心配そうに体を寄せてくる。幼体こども達がいかに彼を信頼しているかが分かる姿だっただろう。

だからジャックも、

幼体こども達は守らなければ……』

と考えた。普通のオオカミ竜オオカミなら、『幼体こどもはまた生めばいい』と考えて自分達を優先するのだが、ジャックはそう考えてしまうのである。

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