オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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飢えが極まって幻覚を

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この後、さらに一頭の仲間が群れの幼体こどもを食おうとしたので、ジャックはその仲間も殺し、自分達の糧とした。

そうだ。

成体おとな幼体こどものどっちが生き延びるか?』

というのも、もはやどちらがとは選べなくなってきている。『生き延びた方が勝ち』なのだ。ジャックとしては幼体こども達が生き延びるために力を振り絞るが。

『どちらが正しいか?』などどうでもいい。ジャックはそれを選択した。これが厳然たる事実だ。

その選択が間違いなら群れごと滅ぶだろうし、正しければ幼体こども達が自分達の存在を受け継いでいってくれるだろう。それは結果が出てみなければ分からない。

とは言え、幼体こども達を生かすためには自分も生き延びなければいけない。そのためには、他のオオカミ竜オオカミの群れを襲ってでも生き延びる。

だが、改めてそこまでの覚悟を決めたジャックの視線の先に、

『いた……いた……! 獲物だ……!!』

飢えが極まって幻覚を見ているわけではない。確かにそこにはインパラ竜インパラの群れの姿があったのだ。しかも、丸々と肥え太った。

実は、インパラ竜インパラガゼル竜ガゼルやその近似種を大量死させた疫病は、すでに収まっていたのである。草原のすべてから獲物を奪ってしまったかのように思えたそれも、あまりに急激に広まり多くを死に至らしめたことで、すべてのインパラ竜インパラガゼル竜ガゼルにまでは感染しなかったのだ。その影響を逃れたインパラ竜インパラガゼル竜ガゼルやその近似種らが、地域によってはこうして残っていたのである。ジャック達はようやく、その地に辿り着けたのだ。

「グルッ……!」

焦って飛び出していこうとする仲間を制し、ジャックは敢えて冷静でいることを心掛けた。ここで焦って逃げられたら、飢えて万全の状態じゃない自分達じゃ追い切れないだろう。だからこそ確実に捕えなければならない。

なのに、

「ガアアッッ!!」

吠えながら一斉に飛び掛かろうとしたオオカミ竜オオカミがいた。

「!?」

ジャックの仲間じゃない。別のオオカミ竜オオカミの群れだった。別の群れも同じインパラ竜インパラを狙って襲い掛かったのだ。

だが、それはあまりに無謀だった。

「ケーッッ!!」

見張り役のインパラ竜インパラが警戒音を発した瞬間、群れのすべてが全力での逃走に移った。しっかりと食べてしっかりと体力を付けていたインパラ竜インパラの全速力に、そのオオカミ竜オオカミの群れはまったく追いつけなかった。

飢えすぎてまともな判断力がなくなっているのだろう。

だが、

「……」

「……」

せっかくの獲物を追い払われてしまって、ジャックの仲間達の怒りは頂点に達していたのだった。

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