オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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方針転換

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ジャックは、獲物を確実に捕えながらもなるべく他の群れとは遭遇しないように気を付けるようにした。飢えている群れであれば勝てるだろうが、元々この辺りを縄張りにしていた群れと今の時点で遭遇してはかなり不利なのは分かっていたからだ。

しかし、その<他の群れ>に、毎日のように遭遇した。どうやら同じようにこちらに移動してきた群れが続々と集まってきているようだ。

だからか、獲物の数が目に見えて減ってきていた。確かに獲物の数は、あの疫病の蔓延以前のそれと変わらないくらいいたのだろうが、オオカミ竜オオカミをはじめとした肉食獣がやはり獲物を求めて集まり、結果として肉食獣の数が異常なそれになったのだろう。<狩られるもの>と<狩るもの>のバランスがまたしても崩れてしまったのだ。

このままではいずれ、同じように獲物がいなくなってしまう。

「グルルルルルルル……」

ジャックにはそれが分かってしまって、ゆえに方針転換を余儀なくされた。

『他の群れを駆除する』

と。降伏し服従の意を示すなら受け入れてもいいものの、そうじゃないものについては駆除しなければならないと考えたのだ。

だから、遭遇したのが勝てそうな相手なら容赦なく倒すことにした。

ジャックとしては本当はやりたくなかった。獲物を狩るのは生きるために必要なので割り切れるものの、仲間を危険に曝してまで他の群れと争うのは彼の望むところではないがゆえに。

事実、一頭、また一頭と仲間が命を落としていく。と同時に、退けた群れの生き残りが新たに仲間に加わったりして、全体としての数は徐々に増えていった。しかし、そうじゃない。そうじゃないのだ。ジャックが大切にしたいのは<群れの勢力>ではなくて、<仲間>なのだ。仲間を犠牲にして群れを大きくしても、意味がない。

「……」

今日もまた、ずっと一緒にいた仲間の一頭が死んだ。その肉を一口食べて、残りは他の者達に譲る。その分、倒した相手の肉を貪る。今回はレオンだった。まったく別の種族なだけあって仲間には加えられなかったから、逃げた者を除いて皆殺しにした。まったく異なる種族だっただけに別に胸も痛まなかった。

いつもこうなら、遠慮する必要がない分、まだ気が楽なのだが……

とは言え、仲間を喪っては元も子もない。

『いつか以前のような暮らしに戻れるのだろうか……』

やはり明瞭な思考ではないものの、それに近い意味合いのことを考える。

同時に、『いつかは戻れる』ことは、ジャックには分かった。こうして肉食獣の数が減っていけば、いずれはバランスが取れるようになることを、何となくではありつつも理解していたのだった。

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