オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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ジョーカーの兄

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そうして指揮官機と思しきロボットをジャックが抑えている間、ジョーカーの兄も懸命に戦っていた。元々はジャックと同じ群れで生まれ育ったわけではなく、ジャックが自らの群れを作ったばかりの頃だったとはいえ途中から加わった自分のことも虐げることなく接してくれた。彼が生まれた群れでは途中から加わった者は群れの中での立場が低く、獲物を捕らえてもそれにありつけるのは群れの幼体こどもより後で、いつも腹をすかしている者ばかりだった。

だからこそボスに挑み自身がボスになることで一発逆転を誰もが狙った。しかしジョーカーの兄がいた頃には誰もそれを成し遂げられなかった。なのにいつの間にか自分と同じ匂いを持つ若いオオカミ竜オオカミがボスの座に収まり、しかもそいつは自分に襲い掛かってきた。ボスであるジャックにではなく、自分に。

訳も分からずそいつと戦ったが、これがまたとんでもなくイカれた奴で、本当に無茶苦茶だった。けれど何とか凌ぎ切ったらジャックが加勢してくれて、事なきを得た。ジャックが相手をしていた雌も、自分が相手をした雄と変わらないかそれ以上にイカれた奴だったみたいだが。

それまでにも、ジャックは自分を何度も守ってくれたし、群れの一部を任せてもくれた。その時には『自分がボスになってもいいかもしれない』という気持ちも頭をもたげたが、傍でジャックを見ていてとても自分が勝てる相手ではないと思い知らされ、とどまってきた。無理にボスの座を目指すよりも、ジャックに任された小さな群れを率いて確実に獲物を捕らえてきた方がずっと安心できた。これからもこの暮らしが続けばいいと思った。

そんな中で獲物が急に減ってしまってひどく腹が空いてしまったこともあったものの、ジャックはそれすら何とかしてしまった。何頭かの仲間は命を落としもしつつ、他の群れは撃退し自分達はこうして生き延びてきたのだから、ジャックの選択は正しかったのだと思う。そしてそんなジャックについてきた自分の選択も。

なればこそ、今は全力をもって敵を倒す。そうしていればきっと上手くいく。これまでもそうだったのだから。

ゆえにジョーカーの兄は死力を尽くした。ジャックが相手をしているものよりは小さいのだから、それを相手に自分が後れを取るわけにはいかない。ジャックは自分を信じて任せてくれているのだ。

もちろんこれも、言語化された明確な思考ではない。ないが、意味合いとしてはおおむねそのようなものであった。だからこそジョーカーの兄も戦えていたのだ。

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