オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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俺はまだ

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アラニーズが決断し、ジャックにナイフを突き立てようとする。だがその時、指揮官機らしきロボットが放ったゴムスタン弾が、ジャックの目を捉える。

「ギャウッ!!」

さすがにジャックもこれには悲鳴を上げた。着弾の衝撃で眼球が破裂したのだから。そしてジャックが怯んだところに、立ち塞がっていたレオンが襲い掛かる。彼の首筋に食らい付き、渾身の力を込めた。

「ガ…ッ? ア……ッ?」

ゴリゴリゴリッッ! と体の中で音がして、雷にでも打たれたかのような衝撃が走る。それでも彼は諦めない。食らい付いたレオンを弾き飛ばそうと暴れる。そんな彼の姿を見て、ジョーカーの兄が引き返そうとした。他の仲間達も。

それに気付いたジャックは、

「ギュアアアアアーッッ!!」

再び命じた。

『逃げろ!!』

と。『逃げて生き延びろ!!』と。

この時点で、ジャック達オオカミ竜オオカミは、約半数の仲間を失っていた。これ以上戦えば確実に全滅する。そしてこいつらは、逃げる者は追わないことが、<空気感>によって察せられた。ならばここは逃げて、別の機会を探るのだ。それが正解のはずだ。

だから逃げることを命じた。

もちろん、ジャック自身も諦めてはいない。諦めてはいないが……

もう、手足が動かなかった。動かそうとするのに言うことを聞いてくれなかったのだ。しかも、まるで一切の光が消え失せてしまったかのように視界が暗くなっていく。

『ダメだ……! 俺はまだ死ねない……! 生きて、仲間達を…子供達を……』

そう思う。思うのに、力が入らない。それどころか、もはや痛みすらない。さらには、なんだかひどく眠い。その眠気に逆らうことができない。

『クソッ! 起きろ! 起きるんだ……! クソお……!!』

彼の意思とは裏腹に、彼の体は勝手にビクビクと痙攣をするだけだった。意味のある動きができなかった。

『クソ…ぉ……』

やがてジャックの体はぐったりと地面に横たわり、さらにレオンがとどめを刺そうと群がる。

「グル……ッ!」

ジョーカーの兄はその光景を見て、

「ガウッ!」

吠えながら引き返そうとするジョーカーとクイーンの子供の前に立ちふさがって制した。もう間に合わないことを察したがゆえに。自分達が生きることを優先したがゆえに。

引き返そうとしていた仲間達も、一頭、また一頭と、改めて踵を返し、去っていく。ジャックの、ボスの命が潰えたことを察して……

それが、仲間達がジャックの姿を見た最後だった。そこからすぐ、彼の体はレオンに貪られ、形を失っていったのだから……

無事だった方の彼のは虚空に向けられ、そこには星々の瞬きが映り込んでいたのだった。



こうして、賢く、勇敢で、勇猛で、優れたボスだったジャックの命は終わりを告げたのである……

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