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ギャナンの章
我らの信仰が今こそ試されている……!
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そうして、<謎のオブジェ>は回収することもままならず、軍は、とにかく神父の私室については立ち入り禁止にして、鍛冶屋などを呼んでオブジェを調べさせることにした。
『刃物のことなら鍛冶屋に聞けば何か分かるかもしれない』
と考えたのだ。
この間も、<謎のオブジェ>と化した少女は、まったく動くことがなかった。生きているのか、死んでいるのか、それさえ分からない。
一方、信徒達は、こんな恐ろしいことがあったにも拘らず、いや、恐ろしいことがあったからこそ、一心不乱に礼拝場で祈り続けた。神の使徒たる神父を殺めた何者かに神罰が下り、災いが退けられることを願って。
『マリー…お願い、無事でいて……』
加えて少女の母親は、娘の無事を祈って祈り続ける。
すると翌日には、街の大きな教会から何人かの神父が訪れて、軍と共に神父の私室を改めて調べていたようだ。
「なんと恐ろしいことだ……」
「悪魔の仕業に違いない」
「我らの信仰が今こそ試されている……!」
神父達は口々にそう言い。
「私めが、前任の無念を晴らしてみせましょう」
雑用係として同行していた一人の若い神父がそう申し出た。その若い神父は、見習い期間を終えたばかりでまだ教会を任されておらず、
『これぞ主の差配!』
とばかりに意気込んだ。
「お前が……?」
他の神父達は戸惑ったが、しかし、このような事件があった教会にわざわざ赴きたいという物好きも他にいないだろうという思惑もあり、
「よろしい。正式な決定はこれからになるが、お前に任せることになるだろう」
と告げて、その場は治まった。
しかしこの時、例の<刃物のオブジェ>に変化が起こりつつあったのを、誰も気付くことがなかった。
さらに翌日、昨日、この教会の次の<担当者>に名乗り出た若い神父が、形ばかりの話し合いにより正式に赴任することになり、やってきた。
前任者の神父の私室は立ち入り禁止にされていたので、別の部屋を私室に使うことになったのだが、それは、アラベルとギャナンにあてがわれた部屋だった。ギャナンを手元に置きたかった前任の神父が厚く遇したからである。
「すまないね。二人にはこっちの部屋に移ってもらいたい」
若い神父がそう言って案内したのは、ほとんどただの物置と変わらない粗末な部屋だった。彼は、自分が神父としての務めを果たすためにそれなりの部屋を使わなければいけないと考えていて、神の慈悲に縋っているだけの者達には、雨露さえ凌げればそれでいいだろうと、悪気なく思っていたのである。
『クソ……まあ、メシにありつけるならいいか……』
アラベルは、不満を覚えながらも、敢えて反発はしなかったのだった。
『刃物のことなら鍛冶屋に聞けば何か分かるかもしれない』
と考えたのだ。
この間も、<謎のオブジェ>と化した少女は、まったく動くことがなかった。生きているのか、死んでいるのか、それさえ分からない。
一方、信徒達は、こんな恐ろしいことがあったにも拘らず、いや、恐ろしいことがあったからこそ、一心不乱に礼拝場で祈り続けた。神の使徒たる神父を殺めた何者かに神罰が下り、災いが退けられることを願って。
『マリー…お願い、無事でいて……』
加えて少女の母親は、娘の無事を祈って祈り続ける。
すると翌日には、街の大きな教会から何人かの神父が訪れて、軍と共に神父の私室を改めて調べていたようだ。
「なんと恐ろしいことだ……」
「悪魔の仕業に違いない」
「我らの信仰が今こそ試されている……!」
神父達は口々にそう言い。
「私めが、前任の無念を晴らしてみせましょう」
雑用係として同行していた一人の若い神父がそう申し出た。その若い神父は、見習い期間を終えたばかりでまだ教会を任されておらず、
『これぞ主の差配!』
とばかりに意気込んだ。
「お前が……?」
他の神父達は戸惑ったが、しかし、このような事件があった教会にわざわざ赴きたいという物好きも他にいないだろうという思惑もあり、
「よろしい。正式な決定はこれからになるが、お前に任せることになるだろう」
と告げて、その場は治まった。
しかしこの時、例の<刃物のオブジェ>に変化が起こりつつあったのを、誰も気付くことがなかった。
さらに翌日、昨日、この教会の次の<担当者>に名乗り出た若い神父が、形ばかりの話し合いにより正式に赴任することになり、やってきた。
前任者の神父の私室は立ち入り禁止にされていたので、別の部屋を私室に使うことになったのだが、それは、アラベルとギャナンにあてがわれた部屋だった。ギャナンを手元に置きたかった前任の神父が厚く遇したからである。
「すまないね。二人にはこっちの部屋に移ってもらいたい」
若い神父がそう言って案内したのは、ほとんどただの物置と変わらない粗末な部屋だった。彼は、自分が神父としての務めを果たすためにそれなりの部屋を使わなければいけないと考えていて、神の慈悲に縋っているだけの者達には、雨露さえ凌げればそれでいいだろうと、悪気なく思っていたのである。
『クソ……まあ、メシにありつけるならいいか……』
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