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実にチンケな悪事
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そもそも、あのアニメの悪役が言っていた、
『自分達は虐げられてきたから、幸せな奴から取り立てることでしか幸せになれない』
という考え方は、琴美と一真の両親の考え方そのものである。琴美と一真の両親には、あのアニメの悪役のような超常の力はなかったから、<実にチンケな悪事>という形でしか再現できなかっただけで。
琴美と一真の両親もさらにその両親に虐げられてきて、だから『幸せな奴らから取り立ててやろう』と考えて<チンケな悪事>に手を染めるようになった。だから周囲からも疎まれて、助けてもらえなかった。助けてもらえないから自分の力で何とかしようとするものの、その『何とか』の発想がまず、
『他者に不利益を与える形でしか実現できない』
というものだったから、両親の周りにはまっとうな人間は残らなかった。多少は気にかけてくれる人間もいただろうが、そういう人間の気遣いすら好ましくない方向で利用しようとして呆れさせ、結果、距離を置かれるということの繰り返しであったのだろう。
だからよく言われる、
『今の自分の状況を作ったのは自分自身』
と言われる面は確かにある。ただ同時に、
<巡り合わせの妙>
というものもあるはずなのだ。琴美と一真が両親に反発し両親とは違う生き方を心掛けようとしていた時期に結人達に出逢えたというのは、これは決して二人の<努力>によるものではなく<単なる偶然>というのもまぎれもない事実なのである。それがなければ、二人も結局は心折れて、
『幸せな奴らから取り立てるしか自分達が這い上がれる方法はない』
的な方向に舵を切ってしまっていた可能性も否定はできなかった。何しろ、高卒ですんなりと<SANA>への就職が決まったりしなかっただろうから。報われもしないのにいつまでも正しくいようとしていられるほど普通の人間は強くない。
<本人の努力及び振る舞い>
<周囲の環境>
つまりそれらはセットなのだ。どちらかだけでは上手くはいかない。どちらかだけで語ろうとするから齟齬が生じる。
周囲の環境の所為にして早々に諦めてしまったのが、琴美と一真の両親と言える。
この時はまだ明確な思考ではなかっただろうが、琴美は、前を行く大森海美神の姿を見ながら、ぼんやりとそんな実感を得ていたのだ。
そんなこんなで、約四十五分もの自転車通学も苦にならず学校に辿り着けた琴美は、自身の視界がこれまでとは比べ物にならないくらいに開けて明るくなったような気がしていた。
いや、実際にそうなのだろう。それまでの彼女は、世界というものをなるべく見ないようにと視線を伏せがちだったのだから。
『自分達は虐げられてきたから、幸せな奴から取り立てることでしか幸せになれない』
という考え方は、琴美と一真の両親の考え方そのものである。琴美と一真の両親には、あのアニメの悪役のような超常の力はなかったから、<実にチンケな悪事>という形でしか再現できなかっただけで。
琴美と一真の両親もさらにその両親に虐げられてきて、だから『幸せな奴らから取り立ててやろう』と考えて<チンケな悪事>に手を染めるようになった。だから周囲からも疎まれて、助けてもらえなかった。助けてもらえないから自分の力で何とかしようとするものの、その『何とか』の発想がまず、
『他者に不利益を与える形でしか実現できない』
というものだったから、両親の周りにはまっとうな人間は残らなかった。多少は気にかけてくれる人間もいただろうが、そういう人間の気遣いすら好ましくない方向で利用しようとして呆れさせ、結果、距離を置かれるということの繰り返しであったのだろう。
だからよく言われる、
『今の自分の状況を作ったのは自分自身』
と言われる面は確かにある。ただ同時に、
<巡り合わせの妙>
というものもあるはずなのだ。琴美と一真が両親に反発し両親とは違う生き方を心掛けようとしていた時期に結人達に出逢えたというのは、これは決して二人の<努力>によるものではなく<単なる偶然>というのもまぎれもない事実なのである。それがなければ、二人も結局は心折れて、
『幸せな奴らから取り立てるしか自分達が這い上がれる方法はない』
的な方向に舵を切ってしまっていた可能性も否定はできなかった。何しろ、高卒ですんなりと<SANA>への就職が決まったりしなかっただろうから。報われもしないのにいつまでも正しくいようとしていられるほど普通の人間は強くない。
<本人の努力及び振る舞い>
<周囲の環境>
つまりそれらはセットなのだ。どちらかだけでは上手くはいかない。どちらかだけで語ろうとするから齟齬が生じる。
周囲の環境の所為にして早々に諦めてしまったのが、琴美と一真の両親と言える。
この時はまだ明確な思考ではなかっただろうが、琴美は、前を行く大森海美神の姿を見ながら、ぼんやりとそんな実感を得ていたのだ。
そんなこんなで、約四十五分もの自転車通学も苦にならず学校に辿り着けた琴美は、自身の視界がこれまでとは比べ物にならないくらいに開けて明るくなったような気がしていた。
いや、実際にそうなのだろう。それまでの彼女は、世界というものをなるべく見ないようにと視線を伏せがちだったのだから。
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