世界で一番ママが好き! パパは二番目!

京衛武百十

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パッと見た光景だけですべてを理解することはできない

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「……」

パパの言うことはもっともだと思った。リアルはアニメみたいに上手くいかないのが当たり前なんだ。私だってそのくらい分かる。

それだけじゃなくて、パパはすごく辛いことも言ってきた。

「いつも言ってるけど、お父さんは綺麗事を言う人は好きじゃない。ここで猫を助けて悪い人を懲らしめて良かった良かったなんていうのは、ただの綺麗事だよ。

…美智果。お父さんは美智果のことが一番大事なんだ。だから美智果が危ない目に遭うかもしれない危険性を自分で作ろうとは思わないんだ。

はっきり言わせてもらうよ。お父さんは猫より美智果が大事だ。美智果を守る為なら、猫を見殺しにだってする……」

『そんな……』

よっしーやマリーは、パパのことを<子供に甘々な優しいお父さん>って思ってるみたいだけど、実はそうじゃないっていうのを私は知ってる。私にとって辛いこと、イヤなこと、聞きたくないことだって言ってくるんだ。それが必要なことだって思ったら。

私は、何も言えないままパパの話を聞いてた。

「もし、猫を助けて、その上でこの子達を懲らしめる為にボッコボコにしたとする。でもその後で、イジメられてた猫は、この子達の誰かが飼ってたハムスターを弄って殺した猫だったって分かったらどうする…?」

『…! それは……』

「猫をイジメてるように見えたのは、実はハムスターを殺されたことの復讐だった……リアルならそういうことだって有り得るんだよ。

ハムスターの仇をとる為に猫を懲らしめて良かった良かったって言ってるあの子達と、

猫を助ける為に彼らをボッコボコにして良かった良かったって言ってる人の何が違う?

アニメを見てる時は、お父さんや美智果は<神の視点>ってやつで状況を把握できるけど、リアルはそうじゃない。パッと見た光景だけで事情のすべてを把握することはできないんだ」

「……」

「猫をイジメてるように見えたから、通りがかった正義感の強い人があの子達をボッコボコにしてた。

だけど、さらにそこに通りがかった別の人からは、何者かが一方的に中学生の子達をイジメてるように見える。後から通りがかった人にはこの子達が猫をイジメてたことは分からない。

さあ、後から通りがかった人はどうするべき?」

そう訊かれて、

「…分かんない…」

とだけやっと言えた。

「そう、分からない。美智果がそう判断するなら、お父さんはそれでいいと思う。まあお父さんならその場で警察に通報するけどね。猫がイジメられてるように見えた時点でもそうする。昔は猫がイジメられてるくらいだと警察は動いてくれなかったかもしれないけど、今は動物虐待も警察が動く案件だから。

スーパーヒーローじゃない僕達にできることなんて、結局はその程度だと思うよ」

「そっか……そうだよね……」

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