68 / 91
パッと見た光景だけですべてを理解することはできない
しおりを挟む
「……」
パパの言うことはもっともだと思った。リアルはアニメみたいに上手くいかないのが当たり前なんだ。私だってそのくらい分かる。
それだけじゃなくて、パパはすごく辛いことも言ってきた。
「いつも言ってるけど、お父さんは綺麗事を言う人は好きじゃない。ここで猫を助けて悪い人を懲らしめて良かった良かったなんていうのは、ただの綺麗事だよ。
…美智果。お父さんは美智果のことが一番大事なんだ。だから美智果が危ない目に遭うかもしれない危険性を自分で作ろうとは思わないんだ。
はっきり言わせてもらうよ。お父さんは猫より美智果が大事だ。美智果を守る為なら、猫を見殺しにだってする……」
『そんな……』
よっしーやマリーは、パパのことを<子供に甘々な優しいお父さん>って思ってるみたいだけど、実はそうじゃないっていうのを私は知ってる。私にとって辛いこと、イヤなこと、聞きたくないことだって言ってくるんだ。それが必要なことだって思ったら。
私は、何も言えないままパパの話を聞いてた。
「もし、猫を助けて、その上でこの子達を懲らしめる為にボッコボコにしたとする。でもその後で、イジメられてた猫は、この子達の誰かが飼ってたハムスターを弄って殺した猫だったって分かったらどうする…?」
『…! それは……』
「猫をイジメてるように見えたのは、実はハムスターを殺されたことの復讐だった……リアルならそういうことだって有り得るんだよ。
ハムスターの仇をとる為に猫を懲らしめて良かった良かったって言ってるあの子達と、
猫を助ける為に彼らをボッコボコにして良かった良かったって言ってる人の何が違う?
アニメを見てる時は、お父さんや美智果は<神の視点>ってやつで状況を把握できるけど、リアルはそうじゃない。パッと見た光景だけで事情のすべてを把握することはできないんだ」
「……」
「猫をイジメてるように見えたから、通りがかった正義感の強い人があの子達をボッコボコにしてた。
だけど、さらにそこに通りがかった別の人からは、何者かが一方的に中学生の子達をイジメてるように見える。後から通りがかった人にはこの子達が猫をイジメてたことは分からない。
さあ、後から通りがかった人はどうするべき?」
そう訊かれて、
「…分かんない…」
とだけやっと言えた。
「そう、分からない。美智果がそう判断するなら、お父さんはそれでいいと思う。まあお父さんならその場で警察に通報するけどね。猫がイジメられてるように見えた時点でもそうする。昔は猫がイジメられてるくらいだと警察は動いてくれなかったかもしれないけど、今は動物虐待も警察が動く案件だから。
スーパーヒーローじゃない僕達にできることなんて、結局はその程度だと思うよ」
「そっか……そうだよね……」
パパの言うことはもっともだと思った。リアルはアニメみたいに上手くいかないのが当たり前なんだ。私だってそのくらい分かる。
それだけじゃなくて、パパはすごく辛いことも言ってきた。
「いつも言ってるけど、お父さんは綺麗事を言う人は好きじゃない。ここで猫を助けて悪い人を懲らしめて良かった良かったなんていうのは、ただの綺麗事だよ。
…美智果。お父さんは美智果のことが一番大事なんだ。だから美智果が危ない目に遭うかもしれない危険性を自分で作ろうとは思わないんだ。
はっきり言わせてもらうよ。お父さんは猫より美智果が大事だ。美智果を守る為なら、猫を見殺しにだってする……」
『そんな……』
よっしーやマリーは、パパのことを<子供に甘々な優しいお父さん>って思ってるみたいだけど、実はそうじゃないっていうのを私は知ってる。私にとって辛いこと、イヤなこと、聞きたくないことだって言ってくるんだ。それが必要なことだって思ったら。
私は、何も言えないままパパの話を聞いてた。
「もし、猫を助けて、その上でこの子達を懲らしめる為にボッコボコにしたとする。でもその後で、イジメられてた猫は、この子達の誰かが飼ってたハムスターを弄って殺した猫だったって分かったらどうする…?」
『…! それは……』
「猫をイジメてるように見えたのは、実はハムスターを殺されたことの復讐だった……リアルならそういうことだって有り得るんだよ。
ハムスターの仇をとる為に猫を懲らしめて良かった良かったって言ってるあの子達と、
猫を助ける為に彼らをボッコボコにして良かった良かったって言ってる人の何が違う?
アニメを見てる時は、お父さんや美智果は<神の視点>ってやつで状況を把握できるけど、リアルはそうじゃない。パッと見た光景だけで事情のすべてを把握することはできないんだ」
「……」
「猫をイジメてるように見えたから、通りがかった正義感の強い人があの子達をボッコボコにしてた。
だけど、さらにそこに通りがかった別の人からは、何者かが一方的に中学生の子達をイジメてるように見える。後から通りがかった人にはこの子達が猫をイジメてたことは分からない。
さあ、後から通りがかった人はどうするべき?」
そう訊かれて、
「…分かんない…」
とだけやっと言えた。
「そう、分からない。美智果がそう判断するなら、お父さんはそれでいいと思う。まあお父さんならその場で警察に通報するけどね。猫がイジメられてるように見えた時点でもそうする。昔は猫がイジメられてるくらいだと警察は動いてくれなかったかもしれないけど、今は動物虐待も警察が動く案件だから。
スーパーヒーローじゃない僕達にできることなんて、結局はその程度だと思うよ」
「そっか……そうだよね……」
0
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる