180 / 2,979
シモーヌ
決別(いよいよか…)
しおりを挟む
コーネリアス号のところまでついてきた、走が気に入っているらしい雌も、重症ではなさそうだが怪我をしていたので保護しようと考えた。重傷者の三人はコーネリアス号の治療カプセルで治療するが、その雌については走と一緒にこちらに来てもらうとしよう。
と、俺は考えた。それが一番だと。
なのに、走が乗り込もうとしても、その雌は決してローバーには近付こうともしなかった。さすがに警戒してるということなのだろう。すると走もローバーに乗り込むことをやめて、雌のところに引き返してしまった。
「走様…!」
と、メイフェアやセシリアが手招きして乗るように促す。
だが、駄目だった。走はメイフェア達に視線を向けるものの、もう近付こうともしなかった。雌の傍についていてあげたいんだろうと思った。そして俺は察した。
そうか…いよいよということか……
予感はあった。ライオン人間の群れと仲良くなって、好きな雌もできたらしくて、ただ子供同士で遊んでるように見えてても、あいつにとってはかけがえのない出逢いだったんだろう。そしてこれ自体も<自然の営み>だ。いずれ来る筈のものだったんだ。それが来ただけだ。
だから俺は言った。
「もういい、メイフェア、セシリア、走の好きにさせてやってくれ……」
しかし、そんな俺に異を唱える者がいた。シモーヌだ。
「そんな!? あの子達をこのまま放っていくんですか…!?」
彼女がそう言うのも、<人間>であれば当然だと思う。人間の基準でなら見た目にはせいぜい十歳を過ぎたくらいにしか思えない、しかも実年齢にいたってはまだやっと五歳になったばかりのあいつらを、オオカミ竜のような猛獣が腹を空かせてうろついてるところに置いていくなど、普通は有り得ないし、人間社会であれば<保護責任者遺棄>として罪を問われても仕方ない話なのも分かってる。分かってるが、残念ながらここは<人間社会>じゃないし、いくら俺の子供ではあってもあいつらはあくまでこの世界に適応した生き物だ。それが事実なんだ。
「シモーヌ。あいつらのことを心配してくれてありがとう。だが、分かってほしい。走は自分で、彼女と一緒にここで生きていくことを選んだ。それをやめさせることは俺にはできない……
ここじゃ俺達の方がむしろ<異端>であり<異物>なんだ。俺達の感覚を押し付けようとしても通用しないんだ。俺達の側があいつらに合わせるのが基本になるんだよ。俺達が主張できるのは、十のうちのせいぜい一つか二つだと思う。
文明の利器を使ってこうして生き延びて家族を守ろうとしてることだけでも相当な我儘だと思う。だからそれ以上は望まない方がいいと俺は思ってるんだ」
「……」
と、俺は考えた。それが一番だと。
なのに、走が乗り込もうとしても、その雌は決してローバーには近付こうともしなかった。さすがに警戒してるということなのだろう。すると走もローバーに乗り込むことをやめて、雌のところに引き返してしまった。
「走様…!」
と、メイフェアやセシリアが手招きして乗るように促す。
だが、駄目だった。走はメイフェア達に視線を向けるものの、もう近付こうともしなかった。雌の傍についていてあげたいんだろうと思った。そして俺は察した。
そうか…いよいよということか……
予感はあった。ライオン人間の群れと仲良くなって、好きな雌もできたらしくて、ただ子供同士で遊んでるように見えてても、あいつにとってはかけがえのない出逢いだったんだろう。そしてこれ自体も<自然の営み>だ。いずれ来る筈のものだったんだ。それが来ただけだ。
だから俺は言った。
「もういい、メイフェア、セシリア、走の好きにさせてやってくれ……」
しかし、そんな俺に異を唱える者がいた。シモーヌだ。
「そんな!? あの子達をこのまま放っていくんですか…!?」
彼女がそう言うのも、<人間>であれば当然だと思う。人間の基準でなら見た目にはせいぜい十歳を過ぎたくらいにしか思えない、しかも実年齢にいたってはまだやっと五歳になったばかりのあいつらを、オオカミ竜のような猛獣が腹を空かせてうろついてるところに置いていくなど、普通は有り得ないし、人間社会であれば<保護責任者遺棄>として罪を問われても仕方ない話なのも分かってる。分かってるが、残念ながらここは<人間社会>じゃないし、いくら俺の子供ではあってもあいつらはあくまでこの世界に適応した生き物だ。それが事実なんだ。
「シモーヌ。あいつらのことを心配してくれてありがとう。だが、分かってほしい。走は自分で、彼女と一緒にここで生きていくことを選んだ。それをやめさせることは俺にはできない……
ここじゃ俺達の方がむしろ<異端>であり<異物>なんだ。俺達の感覚を押し付けようとしても通用しないんだ。俺達の側があいつらに合わせるのが基本になるんだよ。俺達が主張できるのは、十のうちのせいぜい一つか二つだと思う。
文明の利器を使ってこうして生き延びて家族を守ろうとしてることだけでも相当な我儘だと思う。だからそれ以上は望まない方がいいと俺は思ってるんだ」
「……」
12
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる