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子供達

どうにかして連絡を(思い付いたこと)

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新暦〇〇〇九年三月十五日。



「ところで思ったんだが、あの不定形生物の中の人間達とは、どうにかして連絡を取ったりはできないのか?」

見た目には二歳くらいになったあかりに食事を与えてるシモーヌに、そんなことを尋ねてみた。

「それが、私もそう思っていろいろ試してはみたんですが、どうやら無理なようです」

「そうなのか?」

「ええ……まずこの体自体があの不定形生物をベースにして作られているということで、本来なら<全体で一個の生命体>としての機能があった筈だと考えたんですが、どうやらそれももう失われてるようですね」

「機能?」

「はい。手っ取り早く言えば、テレパシーのような能力によってそれぞれが繋がり、そうして全体が一個の生物として存在しているのだと私は考えました。もしその機能が残っているのなら私もあの不定形生物と通信なりリンクなりできると思ったものの、駄目みたいです」

「ふ~む……その辺ははるかも特に不定形生物と交信してるような素振りは見せなかったから、そういうものかもしれないな。それに、以前話したグンタイ竜グンタイの女王についても、もし不定形生物と交信なりなんなりしてるなら多少は人間的な反応があっても良かったと思うんだが、それもまったくなかったし」

「私と同じ姿を持ったっていう例のあれですね?」

グンタイ竜グンタイの女王については、まあ隠しても意味がなさそうだったから正直に話したんだ。その時のことを思い出したのか、シモーヌは困ったように苦笑いしながら言った。自分と同じ姿を持ったのが人間としての知性も理性も感覚も羞恥心も持たずにうろついてたなんてのは、女性としては、いや男でもそうだろうが、相当な辱めだと思う。正直、あれとシモーヌが鉢合わせしなくてよかったよ。

「シモーヌ達の方でも、決まった形態を持ってしまった個体がどうなってたかみたいなのは把握できてたのか?」

ふと改めて思い付いたことを尋ねてみる。

「それが、どうもそれらしい事例はない訳じゃなかったんです。今から考えると、決まった形態しかとれなくなった個体とも繋がっていたと思しき事例は確かにありました。なんて言うか、その部分だけがまるで離島にでもなってしまったみたいにアクセスが難しくなるんです。中からは外がどうなっていたのかよく分かりませんでしたので、まさかこんなことになってるとは思ってもみませんでしたが。

それもあって、もしかしたらこの体の側からもアクセスできるのでは?と考えてみましたがそれは無理だったようですね。どうやらこういう形態をとること自体がイレギュラーな事態なので、他の個体と交信する為の通信機能と言うかアンテナと言うかも壊れる場合が多いのかもしれません」

「なるほど……」

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