929 / 2,961
新世代
來編 待って!
しおりを挟む
新暦〇〇三十三年一月十七日。
正直、相変わらず灯のネーミングセンスは独特だが、まあそれはそれでいいだろう。彼女は<地球人>じゃない。地球をルーツとしたネーミングに拘る必要もないしな。
何より、ビアンカも久利生も反対しなかった。なら、それでいいじゃないか。
そうして出来上がった<ビクキアテグ村>での初めての命がいよいよ誕生しようとしている。
落ち着きなく池の中でぐるぐると回転する來だが、それでももう分かってるだけで五人目の子供だ。俺達が把握してないだけで他にも子供を生んでる可能性すらある彼女にとっては慣れたものだろう。
今はただ見守るしかない。
そして、生まれた瞬間に救出するんだ。
「ウウウウウウ……っ!」
來が唸り声を上げる。体に力が入ってるのが分かる。いよいよだな。
灯とビアンカと久利生、テレジアとグレイ、そして、応援として駆け付けたモニカとハートマンも、池を取り囲むようにして配置に付く。
アリスシリーズとドライツェンシリーズは、コーティング用の樹脂の原料になる物質がここでは確保できないことで、一部、防水されてない部分もあるが、なに、人命優先だ。池に飛び込んだことで故障したとしても、修理すればいい。ロボットはそのためにいるんだ。
ロボットに感謝しつつ、しかし<道具>としてわきまえて付き合っていかないといけない。
それを疎かにすれば、死ぬということがないロボットを庇うために人間の命が危険に曝されるという本末転倒なことが起こる。このことについてもきちんと伝えていかないとな。
と、今はそれどころじゃないか。
水面がさあっと赤く染まる。
「ググググウウウッ!」
來が呻きながらいきんだ。灯とビアンカと久利生がぐっと身構える。
ビアンカと久利生は、どのようにして赤ん坊を救出するか何度もシミュレートしたそうだ。灯も一応は参加してたものの、彼女には瞬間的に本人の体が動くように対処してもらった方がおそらく確実だということで、敢えてその手順は必ずしも守らなくていいということにしている。そもそも灯には軍人としての感覚が身に付いてないからな。咄嗟に想定どおりに体が動くわけじゃない。
もっとも、肉体的には人間と変わらない久利生はともかく、アラニーズであるビアンカも、人間にはできない動きができるようになっているから、その辺りで完璧なシミュレートは難しいだろうが。
それでもとにかく、久利生が來の気を引いて、その隙に赤ん坊を救出するという手順は変わらない。
だが―――――
だが、ぐうっと力を入れたその直後に「ハア…ッ!」と來が息を吐いたのを見計らって、久利生が気を引きビアンカが体を前に出そうとしたのを、
「! 待って!」
灯が制した。
「え…!?」
一瞬、体が固まるビアンカの視線の先で、來が水の中から我が子を救い上げると、そのまま、ペロペロと舐め始める。
しかもその表情は、穏やかなものだったんだ。
別に驚いてる風でも、警戒してる風でもなく、クロコディアの母親として普通のことをしているだけなのだった。
正直、相変わらず灯のネーミングセンスは独特だが、まあそれはそれでいいだろう。彼女は<地球人>じゃない。地球をルーツとしたネーミングに拘る必要もないしな。
何より、ビアンカも久利生も反対しなかった。なら、それでいいじゃないか。
そうして出来上がった<ビクキアテグ村>での初めての命がいよいよ誕生しようとしている。
落ち着きなく池の中でぐるぐると回転する來だが、それでももう分かってるだけで五人目の子供だ。俺達が把握してないだけで他にも子供を生んでる可能性すらある彼女にとっては慣れたものだろう。
今はただ見守るしかない。
そして、生まれた瞬間に救出するんだ。
「ウウウウウウ……っ!」
來が唸り声を上げる。体に力が入ってるのが分かる。いよいよだな。
灯とビアンカと久利生、テレジアとグレイ、そして、応援として駆け付けたモニカとハートマンも、池を取り囲むようにして配置に付く。
アリスシリーズとドライツェンシリーズは、コーティング用の樹脂の原料になる物質がここでは確保できないことで、一部、防水されてない部分もあるが、なに、人命優先だ。池に飛び込んだことで故障したとしても、修理すればいい。ロボットはそのためにいるんだ。
ロボットに感謝しつつ、しかし<道具>としてわきまえて付き合っていかないといけない。
それを疎かにすれば、死ぬということがないロボットを庇うために人間の命が危険に曝されるという本末転倒なことが起こる。このことについてもきちんと伝えていかないとな。
と、今はそれどころじゃないか。
水面がさあっと赤く染まる。
「ググググウウウッ!」
來が呻きながらいきんだ。灯とビアンカと久利生がぐっと身構える。
ビアンカと久利生は、どのようにして赤ん坊を救出するか何度もシミュレートしたそうだ。灯も一応は参加してたものの、彼女には瞬間的に本人の体が動くように対処してもらった方がおそらく確実だということで、敢えてその手順は必ずしも守らなくていいということにしている。そもそも灯には軍人としての感覚が身に付いてないからな。咄嗟に想定どおりに体が動くわけじゃない。
もっとも、肉体的には人間と変わらない久利生はともかく、アラニーズであるビアンカも、人間にはできない動きができるようになっているから、その辺りで完璧なシミュレートは難しいだろうが。
それでもとにかく、久利生が來の気を引いて、その隙に赤ん坊を救出するという手順は変わらない。
だが―――――
だが、ぐうっと力を入れたその直後に「ハア…ッ!」と來が息を吐いたのを見計らって、久利生が気を引きビアンカが体を前に出そうとしたのを、
「! 待って!」
灯が制した。
「え…!?」
一瞬、体が固まるビアンカの視線の先で、來が水の中から我が子を救い上げると、そのまま、ペロペロと舐め始める。
しかもその表情は、穏やかなものだったんだ。
別に驚いてる風でも、警戒してる風でもなく、クロコディアの母親として普通のことをしているだけなのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる