1,447 / 2,961
第三世代
蛮編 それぞれの生存戦略の見本市
しおりを挟む
そのアサシン竜は、気配を消してやり過ごすつもりだったようだ。その巨体と動きを見ただけで『勝てる相手ではない』と悟ったんだろう。戦いを避ける選択というごく自然な判断だったと思われる。
なのに、ヒト蛇は、普通なら視界に捉えていても気付かないほどの隠密性を誇るアサシン竜を確実に見付け、狙ってきたんだ。
「!?」
自分が発見され攻撃対象にされたことを察知したアサシン竜は、当然、臨戦態勢に移る。
真向勝負すればそれこそ一瞬で決着がつくだろうな。そんなことはアサシン竜自身が一番理解していたと思う。だから真っ向勝負などしない。
狙われていると悟った瞬間に逃げに転じる。ドーベルマンMPMがそうしたように、木の枝や幹を盾とし視界から外れようとする。加えて、
『直線距離としては近いのに実際に捕まえようとすると果てしなく遠い』
という間合いを取る。この密林に暮らす動物の多くが、格上の相手と戦わなければならなくなった時には当たり前に使う戦術だ。
いかに格下だろうが、こと、『生きる』という点においては単純な戦闘能力など実はそれほど当てにならないという光景を俺も何度も見てきた。何しろ、野生の生き物に<卑怯>などという概念も<正々堂々>という概念も存在しないんだ。そしてアサシン竜は、意外と知能が高い。自身の戦闘能力がこの密林の中では圧倒的に高いわけでないことを承知しているのか、本当に<暗殺者>のように使えるものは何でも使うということをする者もいる。
この時にヒト蛇が遭遇したアサシン竜も、そういう個体だったんだろうな。
アサシン竜は、木の幹にとまっていた昆虫を、ナイフのようになった長い爪で器用に引っ掛けてヒト蛇の方へと弾き飛ばした。
瞬間、
パシュンッッ!!
と小さな破裂音が響く。と同時に、
「ガヒッッ!?」
それまでただただ眼前にある対象を惨殺することばかり考えていたかのようなヒト蛇が、一瞬、怯んだ。顔に液体が掛かったんだ。それは、その昆虫が天敵に襲われた時に身を守るために放つ<化学物質>だった。強烈な悪臭と化学反応による高温で、それこそ敵の目を本当に潰すことさえある、
<生きた化学兵器>
だった。ここまで無敵とも言える姿を見せてきたヒト蛇が、体長わずか数センチの昆虫に怯んだ瞬間だった。
自然というのは実に面白い。そして、それを文字通り<目潰し>として使うアサシン竜もまた、実に狡猾で抜け目ない生き物と言えるよな。
単純な筋力や牙や爪だけでは決着がつかないこともある。
<それぞれの生存戦略の見本市>
そういうのも、自然というものの姿なんだって気がする。
なのに、ヒト蛇は、普通なら視界に捉えていても気付かないほどの隠密性を誇るアサシン竜を確実に見付け、狙ってきたんだ。
「!?」
自分が発見され攻撃対象にされたことを察知したアサシン竜は、当然、臨戦態勢に移る。
真向勝負すればそれこそ一瞬で決着がつくだろうな。そんなことはアサシン竜自身が一番理解していたと思う。だから真っ向勝負などしない。
狙われていると悟った瞬間に逃げに転じる。ドーベルマンMPMがそうしたように、木の枝や幹を盾とし視界から外れようとする。加えて、
『直線距離としては近いのに実際に捕まえようとすると果てしなく遠い』
という間合いを取る。この密林に暮らす動物の多くが、格上の相手と戦わなければならなくなった時には当たり前に使う戦術だ。
いかに格下だろうが、こと、『生きる』という点においては単純な戦闘能力など実はそれほど当てにならないという光景を俺も何度も見てきた。何しろ、野生の生き物に<卑怯>などという概念も<正々堂々>という概念も存在しないんだ。そしてアサシン竜は、意外と知能が高い。自身の戦闘能力がこの密林の中では圧倒的に高いわけでないことを承知しているのか、本当に<暗殺者>のように使えるものは何でも使うということをする者もいる。
この時にヒト蛇が遭遇したアサシン竜も、そういう個体だったんだろうな。
アサシン竜は、木の幹にとまっていた昆虫を、ナイフのようになった長い爪で器用に引っ掛けてヒト蛇の方へと弾き飛ばした。
瞬間、
パシュンッッ!!
と小さな破裂音が響く。と同時に、
「ガヒッッ!?」
それまでただただ眼前にある対象を惨殺することばかり考えていたかのようなヒト蛇が、一瞬、怯んだ。顔に液体が掛かったんだ。それは、その昆虫が天敵に襲われた時に身を守るために放つ<化学物質>だった。強烈な悪臭と化学反応による高温で、それこそ敵の目を本当に潰すことさえある、
<生きた化学兵器>
だった。ここまで無敵とも言える姿を見せてきたヒト蛇が、体長わずか数センチの昆虫に怯んだ瞬間だった。
自然というのは実に面白い。そして、それを文字通り<目潰し>として使うアサシン竜もまた、実に狡猾で抜け目ない生き物と言えるよな。
単純な筋力や牙や爪だけでは決着がつかないこともある。
<それぞれの生存戦略の見本市>
そういうのも、自然というものの姿なんだって気がする。
0
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる