33 / 112
歴史上最も忌むべき悪女
利害の一致
しおりを挟む
その夜、ミカは、フローリア公国と国境を接していたこともあってマオレルトン家に伝聞的に伝わっていたフローリア公国についての文献を、マオレルトン卿の屋敷に備えられた書庫から探し出し、読み漁った。
そこには、フローリア公国とデヴォイニト王国との数百年に亘る軋轢と、その影響について詳細に記されていた。
国境を接していたことで、マオレルトン領にも少なからず影響があったようだ。
フローリア公国を攻めるための協力を、デヴォイニト王国が求めてきたりという形で。
その際の、デヴォイニト王国側の特使がどのようにしてマオレルトン家に圧力をかけてきたかについても、記録として残っている。
それを見て、ミカの表情はまた凍り付いていた。
『数百年に亘っていがみ合ってきた隣国同士が、たかが王族同士の婚姻で和解しただと……?
有り得んな。
古今東西、隣り合った国同士というのはえてして衝突するものだ。それぞれの利害がどうしてもぶつかるからな。
どこぞの大統領も、隣国からの不法入国に業を煮やして、国境全てに高さ数メートルの壁を築くと吠えていたではないか。戦争にまでは至らずとも、その手の話は枚挙に暇もない。
そういう国同士が手を結ぶ理由は、決まっている。
<利害の一致>だ。
フローリア公国とデヴォイニト王国は何らかの理由で利害の一致をみたのだ。それが果たされるまで双方が目的を違えないための保険として、王族同士が婚姻関係を結んだと見做すのが自然だな……
そして、フローリア公国とデヴォイニト王国共通の目的は……』
そこまで考えたところで、
「ミカ様。そろそろお休みになられませんと、体に障ります」
ウルフェンスが現れ、声を掛けてきた。
見れば空が白み始めている。なるほど、これは夢中になりすぎたということか。
「……そうだな……」
言われてミカも素直に文献を戻し、寝室へと移動した。
だが、彼女の頭の中では、この後、ベッドに横になるまでの間、様々な思考が凄まじい勢いで駆け巡っていたけれど。
こうしてようやくミカが休み、ウルフェンスも床に就く。彼の従者には、
「昼まで休む。それまで起こすな。もちろん、ミカ様もだ」
と告げて。
ウルフェンスが言っていた通り、彼は昼前まで眠り、自分で起きてきた。
ミカの方も、彼女の侍女にも起こさないように釘を刺していたので休んでいるはずだったが、
「ミカ様……」
ミカの方はすでに、いつものように<お忍びでの外出>の用意を済ませ、ウルフェンスが起きてくるのを待っていた。
「疲れていたのはお前の方だったようだな。ウルフェンス」
冷たい眼差しで見詰めながら、ミカは吐き捨てるように言ったのだった。
そこには、フローリア公国とデヴォイニト王国との数百年に亘る軋轢と、その影響について詳細に記されていた。
国境を接していたことで、マオレルトン領にも少なからず影響があったようだ。
フローリア公国を攻めるための協力を、デヴォイニト王国が求めてきたりという形で。
その際の、デヴォイニト王国側の特使がどのようにしてマオレルトン家に圧力をかけてきたかについても、記録として残っている。
それを見て、ミカの表情はまた凍り付いていた。
『数百年に亘っていがみ合ってきた隣国同士が、たかが王族同士の婚姻で和解しただと……?
有り得んな。
古今東西、隣り合った国同士というのはえてして衝突するものだ。それぞれの利害がどうしてもぶつかるからな。
どこぞの大統領も、隣国からの不法入国に業を煮やして、国境全てに高さ数メートルの壁を築くと吠えていたではないか。戦争にまでは至らずとも、その手の話は枚挙に暇もない。
そういう国同士が手を結ぶ理由は、決まっている。
<利害の一致>だ。
フローリア公国とデヴォイニト王国は何らかの理由で利害の一致をみたのだ。それが果たされるまで双方が目的を違えないための保険として、王族同士が婚姻関係を結んだと見做すのが自然だな……
そして、フローリア公国とデヴォイニト王国共通の目的は……』
そこまで考えたところで、
「ミカ様。そろそろお休みになられませんと、体に障ります」
ウルフェンスが現れ、声を掛けてきた。
見れば空が白み始めている。なるほど、これは夢中になりすぎたということか。
「……そうだな……」
言われてミカも素直に文献を戻し、寝室へと移動した。
だが、彼女の頭の中では、この後、ベッドに横になるまでの間、様々な思考が凄まじい勢いで駆け巡っていたけれど。
こうしてようやくミカが休み、ウルフェンスも床に就く。彼の従者には、
「昼まで休む。それまで起こすな。もちろん、ミカ様もだ」
と告げて。
ウルフェンスが言っていた通り、彼は昼前まで眠り、自分で起きてきた。
ミカの方も、彼女の侍女にも起こさないように釘を刺していたので休んでいるはずだったが、
「ミカ様……」
ミカの方はすでに、いつものように<お忍びでの外出>の用意を済ませ、ウルフェンスが起きてくるのを待っていた。
「疲れていたのはお前の方だったようだな。ウルフェンス」
冷たい眼差しで見詰めながら、ミカは吐き捨てるように言ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる