悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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歴史上最も忌むべき悪女

いったい何が

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『疲れていたのはお前の方だったようだな。ウルフェンス』

冷めた目で自分を見詰めそう言うミカに、ウルフェンスは改めて背筋に冷たいものが走るのを感じた。

どれほどいい加減でぬるま湯のような物見遊山に思えても、こうして何ヶ月も諸領地を行脚してしかも各地の催事をこなした上でお忍びで領地を詳細に視察しているのだから、普通は疲労が蓄積しているはずなのだ。事実、警備担当として体力には自信のあった自分でも、さすがに確実にリオポルドの味方であり最も安心できるマオレルトン領に来たことで気が抜けてしまい昼まで寝てしまったというのに、まだ十代半ばとしか思えないミカが平然としていることに。

『この娘は、いったい、その目に何を映しているというのだ…? その心に何を秘めているというのだ……?

いったい何がこの娘を突き動かしているというのか……』

ミカの目的。それは、この国を改革し、列強諸国に呑まれないような威勢を取り戻すことであるのは間違いない。

しかし、彼女にとってこの国はあくまで異邦。自身が生まれ育った故郷ではないはず。思い入れがあるとしても自身の存在すべてを賭けてまでどうにかしなければいけない理由などないはずだ。なのに彼女は恐ろしいほどに強靭な意志の力で自らを律している。

その理由は何なのだ?

だが、そんなウルフェンスの疑問を深慮する暇も、彼女は与えてくれなかった。

「ぐずぐずするな。時間がないのだ。急いでこの国が持つ<能力>を把握し備えなければ、おそらく数年以内にこの国は滅ぶぞ」

淡々と、あくまで冷静に、彼女はそう言った。

「数年以内……っ!?」

ミカがはっきりと断言したそれに、ウルフェンスは息を呑む。

『確かに私も、決して楽観できるような状態でないことは察していた。しかし、さすがに数年以内というのは、穿ち過ぎでは……!?』

そんな考えが顔に出ていたのか、彼女はやはり冷たく言い放つ。

「私は、商人時代に知ったのだ。列強諸国に本拠地を置くそれぞれの商会が、裏でさまざまな算段を立てていることを。

それは、

『どこがどれだけの利権を手にするかという具体的な青図がすでに描かれている』

ということを表している。

分かるか? 奴らはもうすでにこの国を徹底的に陵辱し簒奪しそれぞれの利益としてどのように分配するかということを決めているのだ。

商人は、絵に描いた餅では動かない。いや、そこに<絵に描いた餅>しかないのなら、それをどのようにして金に換えるのかを考える人種だ。

奴らの頭の中には、もはや<セヴェルハムト帝国>は存在しない。奴らにとってこの国は、ただの<資源>なのだ」

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