悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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歴史上最も忌むべき悪女

明と暗

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一方、自国内での国民同士の軋轢を、セヴェルハムト帝国に向けることで収めようと目論んだデヴォイニト・フローリア王国はと言うと、

「せっかく、デヴォイニト・フローリア王国の領地の一部を制圧したのに、そのまま返してしまったのですか?」

と問うネイサンに対して、ミカが、

「国境の山の向こうは、こちら側とは気候が違ってな。あの辺りは決していい農地ではなかったのだ。デヴォイニト・フローリア王国が自国内で国民の不満を解消できなかったのは、それも原因の一つだな。せめて民の暮らしをもっと豊かにできていれば和らげることもできたであろうに。

ゆえに、デヴォイニト・フローリア王国としてはこちらに矛を向けざるを得なかったというのもある」

と説明したとおり、国境周辺からかなりの範囲にわたって、併合してもあまり旨味のない土地であることをミカは知っていたために、帝国側に賠償などを求めないことを条件にそのまま返還、あちらはあちらで復興に追われているところだった。

ただ、セヴェルハムト帝国側と比べると、それはあまり進んでいるとは言えなかっただろう。

なにしろ、遠からず働き手にもなり兵士にもなる可能性のあった少年については容赦なく命を奪われ、かつ、女性や幼い子供については多くが殺されず手足を切り落とされたり片目を潰されたりした状態で残され、それもまたデヴォイニト・フローリア王国側の負担となっていたのだから。

いくら社会保障制度が充実していないとは言っても、そういう<戦争被害者>達をまるっきり放置するというのもいろいろ心情的に厳しいだろう。手厚くとまではいかなくても、見殺しにまではなかなかできないのも人間の心理というものだ。

ましてや、役に立たないからといって<始末>するとなると、それを行う者の心理的な負担もある。その辺りをまったく気にしないような<外道>を国として揃えるというのも必ずしも容易ではない。体裁というのもある。

一方、その残虐行為を行ったのは、混乱に乗じて侵攻してきたいずこかの国や、犯罪者集団であると、セヴェルハムト帝国は訴えていたのだった。

無論、セヴェルハムト帝国側の言い分を鵜呑みにするようなお人好しな国など存在しない。

だが、実際にどさくさ紛れに軍を派遣した国や、裏社会を通じて集めた傭兵を送り込んだ国もあったこともまた事実。さらには本当にただの犯罪者集団も紛れ込んでいたので、それこそ真相は闇の中となっていた。

この辺りは、映像や写真などで客観的な<証拠>を残せないというこの時代なりの事情もあるだろう。<物証>ですらいくらでも捏造が可能であり、そしてその物証が捏造されたものであるという証明も難しい。

だから、

『言った者勝ち』

『声の大きい者が勝ち』

というのもまた、事実なのだった。

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