悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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歴史上最も忌むべき悪女

好事魔多し

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それぞれの貴族の領地を積極的にまたいで人員を融通し、農業も商業もそれまでと段違いに生産性を高めたことで、セヴェルハムト帝国は一気に豊かになっていった。

しかも、協調路線が崩れ互いに支えあうことがなくなった列強諸国の実質的な力は弱まり、相対的に帝国の存在感が増す。

テロが起こればそれに対しても毅然とした態度で臨み、容赦なく不逞の輩に誅を下した。

それに伴い、実績を見せたミカへの忠誠も高まっていく。

何らかの行事で彼女が姿を見せれば、国民は歓喜に包まれ、

「ミカ様! ミカ様! ミカ様!!」

と尊敬の念を込めて何度もその名を口にした。

それを浴び、凛と立つ彼女の姿は神々しくさえあったという。

だが、<好事魔多し>ということなのだろうか。

「……これはまずいかもしれんな……」

ある年、春先から酷く雨が続き、まるで大地を押し潰そうとでもするかのように低く空を覆い尽くす鉛色の塊を見上げて、ミカは呟いた。

彼女には予感があったようだ。

もっとも、悪い予感に胸を掴まれていたのは彼女だけではなかったが。

「くそっ! どうしてこんな……!」

先祖代々、真摯に農と向き合ってきた者達の中には、この後に起こることを予測していた者も少なくなかったのだ。

そして、その予感は現実のものとなった。

日照時間が例年の一割にしか達しなかったことで作物の成長が阻害され、しかも多すぎる雨で根腐れさえ起こした苗が続出したのだ。

農民達は懸命に努力したが、それを嘲笑うように丹精込めて育てた作物が次々と駄目になっていく。

ミカもそれは予測していて低温多湿でも育つ作物を、今期は休ませるはずだった農地へ作付けすることを命じたが、正直、<焼け石に水>だっただろう。

こうして帝国は、『百年に一度』ともいわれるほどの凶作に見舞われたのだった。

しかもその異常気象は帝国と周辺諸国すべてを襲い、歴史的な大飢饉を引き起こしていったのだ。

それは、セヴェルハムト帝国にとって最大の交易国であり、最も豊かな農業国であったはずのトルスクレム王国さえも例外ではなく、収穫量は例年の二割にまで落ち込み、結果、トルスクレム王国は自国民の生存を優先。一切の輸出を中止したのである。

この決断に、トルスクレム王国からの輸出を頼りにしていた周辺国は強く反発。とは言え、自国民を犠牲にしてでも他国を助けるような国など当然なく、決定は覆らなかった。

「まあ、無理もない……」

ミカも国として表向きトルスクレム王国に対して抗議しながらも、個人的には、

『正当な判断だな』

とは考えていた。

『となればやはり、自力でこの困難を乗り切るしかないな……』

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