68 / 112
牢獄の女怪
油断も隙も
しおりを挟む
『私の真意を見抜くこともできずにいいように利用されるような愚か者には相応しい』
自分のために働いてくれて、その結果、罪人として捕らえられることになった者達に対してミカが吐いた言葉に誰もが凍りつく。
しかし、さすがに看守長は先に気を取り直し、
「あはは! こりゃいい! なるほど魔女の言うとおりだ!! お前らはどうしようもない馬鹿だったってことだな!」
ミカの言葉にショックを受ける者達を嘲った。
それに対して若い男が睨み付けると、看守長は、
「なんだその目は!? お前はまだ帝国に歯向かうのか!? この奸賊が!!」
と怒鳴りつけ、手にしていた、硬い木の棒の芯をなめした皮で包んだ棍棒でその若い男の頭を打った。
ゴッ!!
という嫌な音と共に、若い男ががくんと膝をつく。
すると、短い鎖で繋がれていた者達もそれに引っ張られ体勢を崩す。
だが、
「おらよ!」
と掛け声を上げながら、膝を突いた若い男に向けてもう一度棍棒を振り下ろそうと看守長が手を上げた瞬間、ミカが体を翻しドアに向けて走り出した。
が、彼女を拘束していた鎖は看守長の男の腰に繋がれていて、ミカが走り出したことに気付いた看守長がそれに合わせて足を踏ん張ると、さすがに老いたりといえど少なくとも二十になるかどうかという小娘よりは鍛えられた体を持つことで、逆にミカの方がガン!と壁にでもぶつかったように跳ね返り、床に倒れ付した。
「! さすが魔女! 油断も隙もねえな!!」
「……」
看守長の男は鎖をぐいと引き寄せ、ミカを強引に立たせる。そして、
「まったく、こいつはお前らを見捨てて一人だけ逃げようとしたんだぜ? こんな奴に忠誠を誓ってたとか、憐れだな、お前ら」
呆然と佇むルパードソン家の者達に、嘲りと共に憐れむような視線を向けた。
そうして興が削がれたのか若い男にはもう構うことなく、ミカを引きずるようにして、この監獄の看守となるために集められた兵士らと共に地下へと下りていった。
残されたルパードソン家の者達はあまりのことに力なくうなだれ、それを看守となる兵士達がやはり憐れむように見る。
「どうしてこんなことに……」
ウルフェンスの姪に当たる女性はそう言って泣き崩れ、周りにいた者達が支える。
何とも言えない空気が、玄関ホールに満ちていたのだった。
一方、地下牢へと連行されたミカは、先ほど逃げようとしたのとは打って変わっておとなしく従っていた。にも拘らず、看守長は、牢の入り口に立ったミカの頭を棍棒で殴りつけ、
「!!」
彼女は、糞尿と腐った食べ物と何かが混じり合ったらしき得体の知れないすえた臭いを放つ牢内へと昏倒した。
こうして、ミカの、半年に及ぶ監獄生活が始まったのである。
自分のために働いてくれて、その結果、罪人として捕らえられることになった者達に対してミカが吐いた言葉に誰もが凍りつく。
しかし、さすがに看守長は先に気を取り直し、
「あはは! こりゃいい! なるほど魔女の言うとおりだ!! お前らはどうしようもない馬鹿だったってことだな!」
ミカの言葉にショックを受ける者達を嘲った。
それに対して若い男が睨み付けると、看守長は、
「なんだその目は!? お前はまだ帝国に歯向かうのか!? この奸賊が!!」
と怒鳴りつけ、手にしていた、硬い木の棒の芯をなめした皮で包んだ棍棒でその若い男の頭を打った。
ゴッ!!
という嫌な音と共に、若い男ががくんと膝をつく。
すると、短い鎖で繋がれていた者達もそれに引っ張られ体勢を崩す。
だが、
「おらよ!」
と掛け声を上げながら、膝を突いた若い男に向けてもう一度棍棒を振り下ろそうと看守長が手を上げた瞬間、ミカが体を翻しドアに向けて走り出した。
が、彼女を拘束していた鎖は看守長の男の腰に繋がれていて、ミカが走り出したことに気付いた看守長がそれに合わせて足を踏ん張ると、さすがに老いたりといえど少なくとも二十になるかどうかという小娘よりは鍛えられた体を持つことで、逆にミカの方がガン!と壁にでもぶつかったように跳ね返り、床に倒れ付した。
「! さすが魔女! 油断も隙もねえな!!」
「……」
看守長の男は鎖をぐいと引き寄せ、ミカを強引に立たせる。そして、
「まったく、こいつはお前らを見捨てて一人だけ逃げようとしたんだぜ? こんな奴に忠誠を誓ってたとか、憐れだな、お前ら」
呆然と佇むルパードソン家の者達に、嘲りと共に憐れむような視線を向けた。
そうして興が削がれたのか若い男にはもう構うことなく、ミカを引きずるようにして、この監獄の看守となるために集められた兵士らと共に地下へと下りていった。
残されたルパードソン家の者達はあまりのことに力なくうなだれ、それを看守となる兵士達がやはり憐れむように見る。
「どうしてこんなことに……」
ウルフェンスの姪に当たる女性はそう言って泣き崩れ、周りにいた者達が支える。
何とも言えない空気が、玄関ホールに満ちていたのだった。
一方、地下牢へと連行されたミカは、先ほど逃げようとしたのとは打って変わっておとなしく従っていた。にも拘らず、看守長は、牢の入り口に立ったミカの頭を棍棒で殴りつけ、
「!!」
彼女は、糞尿と腐った食べ物と何かが混じり合ったらしき得体の知れないすえた臭いを放つ牢内へと昏倒した。
こうして、ミカの、半年に及ぶ監獄生活が始まったのである。
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる