悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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牢獄の女怪

仕方のない奴だ

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ミカは、その見た目どおり、本来は若くて健康な女性である。

その彼女がこうして男達の相手をしていれば、当然、次にくるのは……

『妊娠……か……』

そうだった。まるで判を押したように正確に訪れていた彼女の月経が、すでに二ヶ月以上遅れている。

さすがに監獄生活などという異常な環境ともなれば不規則になっても当然かもしれないものの、ミカの場合は、たとえ監獄生活でも自身の生活パターンはきっちりと作り上げ、それを守り通してみせた。実際、彼女は多少痩せてはいるものの、基本的には健康そのものである。

肉体も、精神も。

となれば、やはり可能性が一番高いのは……



しかし、彼女はそれを誰にも告げなかった。告げたところで自身が咎人であることには変わりないし、ギロチンに掛けられるまでそう時間もないだろう。

たぶん、生まれる前には刑が執行される公算が高い。

『そもそも、誰が父親かも分からん子を憐れむことができるほど、この世界にはまだ余裕はない……

まあ、向こうでなら、<人権派弁護士>とやらがあれこれ工作して、少なくとも生まれるまでは時間稼ぎもしてくれたかもしれないが、ここではそれも望むべくもないしな……

すまんが、お前には母もろとも時代の糧となってもらうぞ……』

心の中でそう言いつつ、ミカはそっと自分の腹を撫でた。

そしてやはり、淡々と自らの務めを果たす。

悪阻つわり>と思しき体調不良もあったが、元々彼女のそれは軽度のものであったのか、時折気分が悪くなることもありつつ、抑え込むことができてしまった。

加えて、危うい時期でも男達は遠慮なく彼女を責めたので、それにより流産に至る可能性も高い。

正直なところ、ミカ自身もそれを期待していた部分はある。



なのに、彼女の胎内に宿った命は、母親の強さを受け継いだのか、胎児の生育にはまるで適さないであろう環境にも拘らず順調に育ち、遂には、

「む……?」

深夜、寝ていた彼女の腹を『とんっ!』と蹴って見せた。

「……」

さすがのミカもこれには苦笑いを浮かべる。

『さっさと帰ればいいものを……私の下になどいたところで、何も得るものはないぞ……

まったく…仕方のない奴だ……』

すぐに冷淡な表情に戻りつつそっと腹を撫でる。

その時、窓から差し込む月明かりに、彼女のまぶたの端が僅かに光って見えたのは、気のせいなのだろうか……



それでも彼女はまるで揺らがない。翌朝も夜明けと共に目を覚まし、いつもと変わらぬルーチン作業をこなす。

なぜなら彼女は、もう、こういうことも含めて覚悟はしていたからだ。

ただ、できれば早いうちに帰ってくれればとは思っていたけれど……

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