悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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牢獄の女怪

監獄らしい監獄

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新しい看守長<ファンブレン>によって規律を引き締められた監獄は、まさに、

『監獄らしい監獄』

へと一変した。

もっとも、それでもミカ自身はこれまでと何も変わらなかったが。

「これはこれは。さすが元とはいえ王妃様。実に規律正しい所作が身に着いておられる」

とファンブレンが感心するほどに、規律正しい毎日をただ送っていた。

さりとて、他の普通の囚人達にとっては息も詰まるものだったに違いない。



しかし何故、急にこんなことになったのか?

これも、帝国の体質が変化し始めた表れかもしれない。

かつての『いい加減さ』を改め、法と規律と規則で国を運営していく形に順調に進んでいることの証拠だっただろう。

とは言え、鎖に繋がれていながらも、男達の相手をさせられながらも、概ね、それなりの立場にいるメイドとしての役割と極端には違わない<役務>を課せられていた元メイドの囚人達は、年配の男性囚人達と同じく監獄で出る排泄物の処理を新しい役務として課せられていた。

『こんなことなら、前の方が良かった……』

と考えてしまうほどに。

なお、ノーティアについては、さすがにまだ子供だということで役務は免除されているものの、代わりに独房の中でただ無為に時間を過ごすだけの毎日を送ることとなった。

彼女も、掃除や食事の用意を手伝わされることには不満も抱いていたことで、初めのうちは喜んだが、三日もすると、

『こんなところに閉じ込められてるだけなんてイヤ…! 頭がおかしくなりそう……!!』

と考えるようになった。

そして五日目には爪を齧りだし、その翌日には自分の髪を抜き始めた。それも、最初は一本ずつだったものが数時間後には十数本まとめてと、明らかにエスカレートしていく。

いわゆる、<拘禁反応>の一種だと思われる。

しかしこの時点ではそういう部分の研究も進んでおらず理解もされていなかったため、

「ノイローゼだな…」

ノーティアの独房を担当していた看守が彼女の様子を見ながらそう呟いただけで、なんの対処もされなかった。

これにより、ノーティアは、僅か二週間で、頭髪が明らかに減り、目が落ち窪み、爪もボロボロ、肌も荒れて、まるで小柄な老婆のような姿へと変じてしまったのである。



この辺りの精神的な分野についての研究が進むにはさらに数百年の時間が必要だろう。

『その身分に生まれついた』というだけで無限責任を負わされることが見直されていくのにもまだまだ時間が掛かる。

物事が更新されていくには、時間が必要だ。

ミカは、この国が変わっていくきっかけを作るために揺さぶりを掛けたに過ぎずない。

彼女も、それは分かっていた。

だからただ静かに、最後の時を待っていたのであった。

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