悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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牢獄の女怪

統治機構

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男達の相手をする必要はなくなったものの、それは逆に、

『どうやらいよいよ私の最後の日が決まったということか……』

ミカにそう推測させるものでもあった。

恐らくはここまで、彼女の処遇について<議会>の方でいろいろ混乱していたのだろう。だから刑が執行されずに来た。

『どこで刑を執行するか?』

『ギロチンに掛ける前に国中を引きまわしてはどうか?』

『いやいや、ギロチンのような一瞬で楽になれる刑では生温い。四肢を馬に繋いで別々に走らせ、体を引き裂いてやるべきだ!』

等々、それぞれが好き勝手なことを言ってまとまらなかったのだろう。

ゆえにここまで時間がかかってしまった。

……いや、そういう一面も確かにあったのだが、実際にはそれ以上に、ただ感情的に声を上げるだけでなく、ミカをギロチンにかけるための<法的根拠>を整備していたというのもあったのだ。

ミカの一言で刑罰が決定してしまったそれまでの在り方を見直し、その時々の国主の気分一つで何もかもが決まってしまうのではなく、明確な基準を設けて随時それに照らし合わせれば常に同じ結論に至るという形を求めた。

つまり、<個人による支配>から<法による支配>への移行である。暴君により国が好きにされてしまうことを防ぐために。

一人の人間による治世では、なるほど賢く聡明で慈愛に満ちた者がその地位に就けばそれなりに良い国にもなるだろう。しかし半面、一度ひとたび悪鬼の如き邪なる者が座に就いてしまえば、たちどころに多くの人間が虐げられ苦しむことになるというのを、彼らは直に経験した。

加えて、人間はいつか死ぬ。どんなに優れた者であってもその事実からは逃れられず、そしてまったく同じ能力を持った者が後継者に収まるとは限らないのだ。

また、人柄の良い為政者であっても必ずしも国家運営や他国との駆け引き、侵略行為に対する効果的な備えといった分野までもが優れているとは限らないこともまた事実。

これは、ミカの夫であり名目上の<先王>であるリオポルドが、ただただ<いい人>なだけで国政については無能の極みであったことを反省したものである。

権力の座に就いた人間の資質のみで国そのものの在り方まで変わってしまうのを防ぎ、千年の繁栄を目指す。

実を言うとこれは、かつての<神聖皇国ティトゥアウィルキス>が取り入れていた統治機構だった。

しかし、長く安寧の世が続く間に人々は自身の享楽に溺れることに腐心するようになり、それが当事者意識を衰えさせ、国家運営を完全に他人任せにするようになり、結果、法に基づき国を統べる従来の体制は有形無実と化して権力者の暴走を許し、結果、国の分裂を招くに至り、求心力を失って事実上の滅亡を迎える流れになったのである。

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