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牢獄の女怪
神聖皇国ティトゥアウィルキス
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<神聖皇国ティトゥアウィルキス>は、議会制民主主義の原型とも言える政治体制をとっていた国だった。
<皇帝>を国主としつつも国政の場では<元老院>や<貴族院>と呼ばれる議会によって様々な政策について議論がなされ、皇帝の一存で何もかもを決められるわけではなかった。
地球で見られるそれとは若干ニュアンスが違うだろうが、元老院が<上院>、貴族院が<下院>的な役割をしていたという感じだろうか。
元老院は限られたごく一部の権力者、貴族の中でも特に力を持つ者達や、各地方を統括していた総督経験者によって構成され、いわゆる庶民とは完全に隔絶した者達の代表だった。
一方の貴族院は、<貴族>と冠されてはいるもののあくまで、
『貴族が管理する諸領地の民衆の代表としての』
というニュアンスであり、選挙は経ないもののある程度は民衆の意見も汲み上げた上でそれを国政の場に反映させるのが役割だったといえるだろう。
これにより<神聖皇国ティトゥアウィルキス>は、実に民主的な国として成立していたらしい。
しかし、<元老院>も<貴族院>も、実質的には指名や世襲によって人選が行われるためにどうしても平民達自身が政治に関与しているという実感に乏しかったこともあってか、
『お上のやることは自分達には関係ない』
的な諦観が蔓延。
『お偉い方々に任せておけばいい』
とばかりに自分達は目の前の享楽に溺れ、国政と民衆とは大きく乖離することとなっていった。
結果、元老院と貴族院と皇帝は互いに権力闘争に明け暮れるだけとなり、政策も十分に議論されず、政治は形骸化していったそうだ。
それに伴って、人心は乱れ、活力は失われ、そしてとうとう国が分裂、求心力の低下は限界を超えてしまった。
<国>というもの自体が有名無実化した、限りなく無政府状態に近い混沌へと移行していったのである。
このため、文化や技術の継承すらままならなくなり、文明そのものが衰退の一途を辿っていたところで、<ルオハイン=ラ=セヴェルハムト>という傑物が現れ、光に誘われる虫のように人々が集まり、<セヴェルハムト帝国>が成立したというのが歴史だった。
彼はまったく機能していなかった<議会>を廃止。自分と、自分が見出した優秀な者達のみによる合議制を取り、スピード感溢れる政治によって人々を導いた。
だが、ルオハイン=ラ=セヴェルハムトは確かに優れた為政者であり英雄であり<王>であったが、それに続く者達は必ずしも彼には及ばず、セヴェルハムト帝国は、建国から百年足らず、国王が四代目になる頃には早々に馬脚を現し、ミカが王妃となった頃のそれに近い様相を呈していたのだった。
<皇帝>を国主としつつも国政の場では<元老院>や<貴族院>と呼ばれる議会によって様々な政策について議論がなされ、皇帝の一存で何もかもを決められるわけではなかった。
地球で見られるそれとは若干ニュアンスが違うだろうが、元老院が<上院>、貴族院が<下院>的な役割をしていたという感じだろうか。
元老院は限られたごく一部の権力者、貴族の中でも特に力を持つ者達や、各地方を統括していた総督経験者によって構成され、いわゆる庶民とは完全に隔絶した者達の代表だった。
一方の貴族院は、<貴族>と冠されてはいるもののあくまで、
『貴族が管理する諸領地の民衆の代表としての』
というニュアンスであり、選挙は経ないもののある程度は民衆の意見も汲み上げた上でそれを国政の場に反映させるのが役割だったといえるだろう。
これにより<神聖皇国ティトゥアウィルキス>は、実に民主的な国として成立していたらしい。
しかし、<元老院>も<貴族院>も、実質的には指名や世襲によって人選が行われるためにどうしても平民達自身が政治に関与しているという実感に乏しかったこともあってか、
『お上のやることは自分達には関係ない』
的な諦観が蔓延。
『お偉い方々に任せておけばいい』
とばかりに自分達は目の前の享楽に溺れ、国政と民衆とは大きく乖離することとなっていった。
結果、元老院と貴族院と皇帝は互いに権力闘争に明け暮れるだけとなり、政策も十分に議論されず、政治は形骸化していったそうだ。
それに伴って、人心は乱れ、活力は失われ、そしてとうとう国が分裂、求心力の低下は限界を超えてしまった。
<国>というもの自体が有名無実化した、限りなく無政府状態に近い混沌へと移行していったのである。
このため、文化や技術の継承すらままならなくなり、文明そのものが衰退の一途を辿っていたところで、<ルオハイン=ラ=セヴェルハムト>という傑物が現れ、光に誘われる虫のように人々が集まり、<セヴェルハムト帝国>が成立したというのが歴史だった。
彼はまったく機能していなかった<議会>を廃止。自分と、自分が見出した優秀な者達のみによる合議制を取り、スピード感溢れる政治によって人々を導いた。
だが、ルオハイン=ラ=セヴェルハムトは確かに優れた為政者であり英雄であり<王>であったが、それに続く者達は必ずしも彼には及ばず、セヴェルハムト帝国は、建国から百年足らず、国王が四代目になる頃には早々に馬脚を現し、ミカが王妃となった頃のそれに近い様相を呈していたのだった。
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