悪しき女帝のためのパヴァーヌ

京衛武百十

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牢獄の女怪

命のカウントダウン

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<神聖皇国ティトゥアウィルキス>が辿った道や、<セヴェルハムト帝国>が辿った道は、

『人間がいかに過去に学ぶことのない愚かな生き物であるか』

ということの根拠にする者もいるだろう。しかしミカはそうは思わない。

『<神聖皇国ティトゥアウィルキス>が何故そうなったのか、<セヴェルハムト帝国>が何故こうなったのかを学べばそこから何かを得る者は必ず出てくる。だからこそ人間は技術を進歩させることができたのだ。

技術に比べて<心>というものは非常に難解で厄介で面倒なものであることは確かに事実。しかしそれだけですべてが決まるわけではないことを、私は知っている。

ヒロキ……あなたがその証拠だ。

七人もの人間を殺して死刑になった祖父を持ちながらも、あなたは、千人、万人の人を救える可能性を持った人に育った。

そんなあなたでも生きることができない時もあるほどこの世というのは残酷だけれど、同時に、<可能性>というものは常にあるということをあなたは私に教えてくれた。

私は、人間という生き物の可能性を捨てきることはできない……

たとえ、自らが悪魔となろうともな……』

独房の中でただ自らの命のカウントダウンを刻み続けながらも、彼女は思考することをやめなかった。

敢えて命の取捨選択を行うことで生き延びた者達の中に、次の百年を築き上げる者が現れる可能性は間違いなくある。それがなければ、人間などとっくの昔に滅びているはずだ。

一人、裸で、野に放り出されれば、数日と生き延びることもできないような脆弱な生き物でしかない人間が、ただ愚かなだけであるのなら。

その一方で、勝手に命を選んだこと自体はまぎれもない<罪>だ。罪は購われなければならない。

自身の治世の間に、帝国内とその周辺国で失われた、十数万もの命が、自分とはらの中の子の二人分の命で吊り合うはずは決してないが、十数万の犠牲の最後を締め括るという意味であれば、吊り合いを考える必要もあるまい。

それでもなお、人間達は一足飛びに<より良い世界>などというものを実現できないことは分かっている。文明がさらに発達し技術が進歩すればそれによって大きな武力を得、やがて世界規模の争いを始めるであろうことも彼女は知っている。

だが、『それでも』、なのだ。

それでも希望が潰えることがないと、彼女は知っている。

何の因果かそのための歯車として選ばれてしまったが、結果として自身の選択に後悔はない。自分のやり方に瑕疵があったのであれば、後の世の人間達がその過ちを教訓として活かせばいい。

後悔などしたところで、失われた命は戻りはしないのだから。

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