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転生編
自分の行く先々に現れ無言で見詰めてくる邪神。怖いです
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「さ、さようなら」
自分を見詰めるカハ=レルゼルブゥアに気付き、ユウカは思わず改めて頭を下げた。とてもそうは見えなかったが、
『見送ってくれてるのかも…』
と考えたからだ。
しかし、カハ=レルゼルブゥアの方には全く変化が見られなかった。ただこちらを見詰めてくるだけである。念の為にもう一度頭を下げてから、ユウカは背を向けて歩き出した。
しばらく行ったところでそっと振り返ってみると姿が見えなくなっていたことで、
『やっぱり見送ってくれただけなんだ……』
と胸を撫で下ろした。だが、改めて前を向いて歩き出そうとして、足が止まってしまう。
「…え?」
思わず声を漏らした彼女の視線の先に、黒い人影が見えていたのだ。蝋細工のような白い無機質な顔と真っ赤な瞳がそこにはあった。紛れもなくそれは、カハ=レルゼルブゥアだ。
『なに…? どういうこと…? 私、何かしちゃったのかな…?』
混乱する頭でそういうことを考えていたユウカだったが、答えが出る筈もなく、どうしていいかも分からないまま恐る恐る歩き出して、軽く会釈をしながらその前を通り過ぎた。
だが、カハ=レルゼルブゥアは特に何かしてくるでもなく声を掛けるでもなく、ただユウカのことを見ているだけだった。それがまた意味不明で、ユウカの頭はますます混乱していた。
『なんなんだろう……?』
ここでは、体の傷が治るのと同じで、たとえ時間はかかっても心の傷も必ず治る。そもそも無限と言っていいほど時間があるのだから当然だろう。また、脳そのものが損傷したとしてもむしろその方が体の傷と同じくきちんと回復するので、発狂するということもない。とは言え恐怖は感じるし不安も感じる。相手がただの人間であってもこんなことをされたら普通は怖い。しかもそれが邪神だというんだからその恐怖は尋常ではなかった。いくら『死なない』と言われても、それを完全に実感するには彼女はまだ経験が浅すぎた。だから怖い。
『なんなの、なんなの、なんなの……!?』
なるべく平静を装おうとしても、無意識に足が速くなる。とにかくこの場から逃げたいという気持ちが無意識のうちに体を動かしていた。なのに……
「―――ひっっ…!!」
もう後ろは振り向くまいと心に決めて歩いた先に、またそれはいたのだった。カハ=レルゼルブゥアだ。まるで感情を感じさせない、冷たいのに燃えるように赤い瞳が、真っ直ぐにユウカを捉えていた。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!』
何が悪かったのか何に謝っているのか彼女自身にも分からなかったがとにかくそう心の中で何度も謝りながら、彼女は早足で歩き続けたのだった。
自分を見詰めるカハ=レルゼルブゥアに気付き、ユウカは思わず改めて頭を下げた。とてもそうは見えなかったが、
『見送ってくれてるのかも…』
と考えたからだ。
しかし、カハ=レルゼルブゥアの方には全く変化が見られなかった。ただこちらを見詰めてくるだけである。念の為にもう一度頭を下げてから、ユウカは背を向けて歩き出した。
しばらく行ったところでそっと振り返ってみると姿が見えなくなっていたことで、
『やっぱり見送ってくれただけなんだ……』
と胸を撫で下ろした。だが、改めて前を向いて歩き出そうとして、足が止まってしまう。
「…え?」
思わず声を漏らした彼女の視線の先に、黒い人影が見えていたのだ。蝋細工のような白い無機質な顔と真っ赤な瞳がそこにはあった。紛れもなくそれは、カハ=レルゼルブゥアだ。
『なに…? どういうこと…? 私、何かしちゃったのかな…?』
混乱する頭でそういうことを考えていたユウカだったが、答えが出る筈もなく、どうしていいかも分からないまま恐る恐る歩き出して、軽く会釈をしながらその前を通り過ぎた。
だが、カハ=レルゼルブゥアは特に何かしてくるでもなく声を掛けるでもなく、ただユウカのことを見ているだけだった。それがまた意味不明で、ユウカの頭はますます混乱していた。
『なんなんだろう……?』
ここでは、体の傷が治るのと同じで、たとえ時間はかかっても心の傷も必ず治る。そもそも無限と言っていいほど時間があるのだから当然だろう。また、脳そのものが損傷したとしてもむしろその方が体の傷と同じくきちんと回復するので、発狂するということもない。とは言え恐怖は感じるし不安も感じる。相手がただの人間であってもこんなことをされたら普通は怖い。しかもそれが邪神だというんだからその恐怖は尋常ではなかった。いくら『死なない』と言われても、それを完全に実感するには彼女はまだ経験が浅すぎた。だから怖い。
『なんなの、なんなの、なんなの……!?』
なるべく平静を装おうとしても、無意識に足が速くなる。とにかくこの場から逃げたいという気持ちが無意識のうちに体を動かしていた。なのに……
「―――ひっっ…!!」
もう後ろは振り向くまいと心に決めて歩いた先に、またそれはいたのだった。カハ=レルゼルブゥアだ。まるで感情を感じさせない、冷たいのに燃えるように赤い瞳が、真っ直ぐにユウカを捉えていた。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!』
何が悪かったのか何に謝っているのか彼女自身にも分からなかったがとにかくそう心の中で何度も謝りながら、彼女は早足で歩き続けたのだった。
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