凶竜の姫様

京衛武百十

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出逢い

ストルティオ竜、サススクロファ竜を狙う

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乾いた荒野の夜は寒かったが、錬義れんぎはそれをものともせずぐっすりと眠った。そして空が明るくなり始めた頃、

「!」

がばっと体を起こし、着る寝袋を脱ぎ、ラーメンが入っていた布から今度は干し肉を取り出して、そのままバリバリと貪る。顎の強さが分かる光景だった。その後、ポケットから<デンタルフロス>を取り出して、歯の隙間に詰まった食べカスを掻き出す。それが終わると使ったデンタルフロスはそのまま捨てる。植物の繊維を利用して作られているものであり、早々に生分解されるのだ。

歯磨き粉は使わない。口をゆすぐ水がもったいないからだ。ラーメンをスープも残さず食うのもそれが理由だ。

<便利で清潔な社会>に住んでいる人間には理解できないかもしれないが、ここではむしろ当然の在り方である。<潔癖症>ではまともに生きられない世界ゆえに。

そうして準備を終え、荷物をミネルバの翼に収納し、岩の端から下を覗き込んだ。すると、ストルティオ竜ストルティオの亜種らしき亜竜ありゅうもすでに活動を開始していた。

しかも、何やら緊張した様子だ。

「…なるほど……」

錬義れんぎは地平線の方に視線を向けた。その手前に、いくつかの影。何らかの動物の姿。

「あれは、サススクロファ竜サススクロファの仲間かな?」

サススクロファ竜サススクロファ>は、亜竜ありゅうの一種で、体長は約五メートル。雑食性のイノシシに似た動物である。普段は十数頭の群れを作って、川や地下水が湧き出した池の近くに住み、そこに生える背の低い植物や、水を求めて集まってくる小動物を餌にしていた。そして、ストルティオ竜ストルティオの好物でもある。

川に沿ってサススクロファ竜サススクロファが来たことを匂いで察し、狩りをするためにストルティオ竜ストルティオが動き出したというわけだ。

卵を守るために一頭のメスが残り、四頭が移動を開始する、その様子を、錬義れんぎは双眼鏡で追った。

さらに、ミネルバの翼のトランクから今度は小さな機械を取り出す。ドローンだった。

「ミネルバ、頼む」

そう告げるとドローンが作動。サススクロファ竜サススクロファ目掛けて飛んでいった。ミネルバに制御してもらい、記録を取るのである。

距離にして約一キロ。それを一気に飛んで、一分少々で辿り着く。

錬義れんぎも岩の上から双眼鏡で観察をするが、その時、

「!?」

彼の体に緊張が走った。

「ミネルバ! テイクオフ!!」

双眼鏡をミネルバの機体に固定して、錬義れんぎが叫ぶ。

「彼女だ! サススクロファ竜サススクロファを狙ってる!! 僕も行くぞ!!」

叫びながら、錬義れんぎはプロペラを回転させるミネルバの機体を掴んで、あろうことか、岩の上から放り投げるように空中へと放ったのだった。

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