何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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彼ら自身の手で、しっかりとしたものを切り開いていかなくちゃ

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春になり、ヘルデカイラス公国での作付けがいよいよ本格的に始まる。

で、結論から言えばそれについては大成功だった。ここの農民達がそもそも真面目で土のことをよく分かってる人達だったから、余計な茶々さえ入らなければ失敗する理由がない。

夏までの収穫だけで、<悪魔のパン>騒動による影響をほぼリカバーできるだけの成果が得られた。もし他国からの輸入が滞ったとしても、飢餓に陥る心配はほぼなくなったはずだ。しかも、主食である小麦の生育具合も順調で、おそらくこの国始まって以来の大豊作になるのが確実だった。

それだけじゃない。一部の畑で麦角菌の感染が確認されたけど、それはむしろ好都合だったと思う。この国の魔法使いに、<抗麦角菌魔法>を実地で試してもらう機会ができたんだから。

「落ち着いてやれば大丈夫です。丁寧に精霊に働きかけてください。慌てないで」

私の指示通りに動いてくれる魔法使いを選別してたから、そこでも何も問題なかった。その前の魔法使いの動員の段階で、変にプライドの高い人達がごねて少し騒ぎになったりもしたけど、そこは領主様の口利きでどうにかこうにか抑えることができた。

そんなことで揉めてる暇はないんだ。取り敢えず道筋だけ立てれば私はこの国からいなくなる。余所者の小娘に大きな顔をされるのが気に食わないという人達も、私がいなくなれば折れてくれるんじゃないかな。もし折れずにごね続けるなら、それはその人達の問題だ。私には関係ない。

「おお…!」

見た目ではあまり分からないから普通の人にはピンとこないだろうけど、魔法使いには、小麦畑に広がっていた<悪魔のパンをもたらす悪い精霊>の気配が分かるから、それがみるみる消えていくのを感じ、彼らは感嘆の声を上げた。

「あれが<悪い精霊>だったのか。教えてもらわなければ我々には区別がつけられなかった。感謝する」

そう言って私の手を握り締めたけど、彼らも優秀な魔法使いだったからすぐに<抗麦角菌魔法>を身に付けられたんだ。

「私はたまたま先に見付けられただけです。皆さんだってもう少ししたら気付けてたと思います。きっかけの問題ですよ」

私はそんな風に言わせてもらったけど、たぶん、実際にそうだったと思う。私がいなくてもいずれ誰かが発見してた。私はその<いずれ>を少し早めただけだ。

それに、今回のことで<精霊の正体>を彼らも知った。きっとそこから彼ら自身が様々なものを見つけていくに違いない。

『誰かに助けてもらう』だけじゃダメなんだ。彼ら自身の手で、しっかりとしたものを切り開いていかなくちゃ。

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