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余ったから食べなさい。餅が入ってるからしっかり噛んで
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なんてことを、お雑煮を食べながら考えてた私だけど、私と、ベントと、アルカセリスと、ティンクラウラの四人での時間が、とても楽しくて幸せなのも事実なんだ。
本当はここにエマも加わって欲しいんだけど、今はまだそれは難しいというのもちゃんと分かってる。
だから無理はしない。
食事を終えて、ティンクラウラを家まで送り届けて、アルカセリスが今日の仕事を終えて宿舎へと帰ってから、私は、残っていたお雑煮を温め直してそれを手に、奴隷小屋へと向かった。
「いい? 開けるわよ」
一応、ノックだけはして、でも返事は聞かずにドアを開け、私は中に入った。
するとエマは、床に手をついて服従の姿勢を見せつつ、私の指示を待った。
そこで私は、
「それはもういいから立ちなさい。それからテーブルに着いて」
私が指示すると、エマはすかさずその通りにしてくれた。
で、その彼女の前に、大きめの椀に入れたお雑煮を置いて、さらに命じた。
「余ったから食べなさい。餅が入ってるからしっかり噛んで」
「……」
何か言いたげに私を見た彼女には取り合わず、
「文句言わずに食べなさい」
と命じた。
彼女には基本的に好き嫌いがないことは確認してある。私はまた、椅子が壊れないか慎重に確認しつつ座って、彼女がお雑煮を食べ始めるのを眺めてた。
すぐにその場を立ち去ってもよかったんだけど、やっぱり彼女がお雑煮を喜んでくれるかどうか、いや、分かりやすく喜んだりはしないのは分かってるけど、嫌がってるかどうかだけなら表情を見てれば分かる。
それを確認したかったのと、万が一事故が起こっても嫌だし、彼女が食べ終わるまでそこにいた。
『もったいなくて食べられない』
的にすぐには手を付けなかった彼女も、
「冷めたら餅が硬くなるから、今のうちに食べなさい」
と私に指示されると観念したかのように食べ始めた。
すると一口含んだ時にハッとなったのが分かった。あたたかくて、しかも美味しいものなんて恐らくほとんど食べたことがないだろう。
私に言われたからというのもあるかもしれないけど、彼女はすごく丁寧にじっくりと味わいながらお雑煮を食べていった。
お餅もしっかり噛んで、と言うより味わって、食べてくれた。
そんな彼女の表情は、とても穏やかなそれに見えた。
しかも、目が潤んだと思ったら、ポロポロと涙を流し始めて……
だけど私は敢えて何も言わずに、ただ彼女が食べ終わるまで待った。
余計なことを言って、彼女がせっかく味わってくれてるのに水を差すのも嫌だったからね。
『おかわりは?』とか訊いたら遠慮するのが分かってたから、最初から大きめの椀にもって行ったんだけど。正解だったみたいだ。
残さずキレイに食べ切ったエマは、再度床に膝をついて手をついて、深々と頭を下げたのだった。
本当はここにエマも加わって欲しいんだけど、今はまだそれは難しいというのもちゃんと分かってる。
だから無理はしない。
食事を終えて、ティンクラウラを家まで送り届けて、アルカセリスが今日の仕事を終えて宿舎へと帰ってから、私は、残っていたお雑煮を温め直してそれを手に、奴隷小屋へと向かった。
「いい? 開けるわよ」
一応、ノックだけはして、でも返事は聞かずにドアを開け、私は中に入った。
するとエマは、床に手をついて服従の姿勢を見せつつ、私の指示を待った。
そこで私は、
「それはもういいから立ちなさい。それからテーブルに着いて」
私が指示すると、エマはすかさずその通りにしてくれた。
で、その彼女の前に、大きめの椀に入れたお雑煮を置いて、さらに命じた。
「余ったから食べなさい。餅が入ってるからしっかり噛んで」
「……」
何か言いたげに私を見た彼女には取り合わず、
「文句言わずに食べなさい」
と命じた。
彼女には基本的に好き嫌いがないことは確認してある。私はまた、椅子が壊れないか慎重に確認しつつ座って、彼女がお雑煮を食べ始めるのを眺めてた。
すぐにその場を立ち去ってもよかったんだけど、やっぱり彼女がお雑煮を喜んでくれるかどうか、いや、分かりやすく喜んだりはしないのは分かってるけど、嫌がってるかどうかだけなら表情を見てれば分かる。
それを確認したかったのと、万が一事故が起こっても嫌だし、彼女が食べ終わるまでそこにいた。
『もったいなくて食べられない』
的にすぐには手を付けなかった彼女も、
「冷めたら餅が硬くなるから、今のうちに食べなさい」
と私に指示されると観念したかのように食べ始めた。
すると一口含んだ時にハッとなったのが分かった。あたたかくて、しかも美味しいものなんて恐らくほとんど食べたことがないだろう。
私に言われたからというのもあるかもしれないけど、彼女はすごく丁寧にじっくりと味わいながらお雑煮を食べていった。
お餅もしっかり噛んで、と言うより味わって、食べてくれた。
そんな彼女の表情は、とても穏やかなそれに見えた。
しかも、目が潤んだと思ったら、ポロポロと涙を流し始めて……
だけど私は敢えて何も言わずに、ただ彼女が食べ終わるまで待った。
余計なことを言って、彼女がせっかく味わってくれてるのに水を差すのも嫌だったからね。
『おかわりは?』とか訊いたら遠慮するのが分かってたから、最初から大きめの椀にもって行ったんだけど。正解だったみたいだ。
残さずキレイに食べ切ったエマは、再度床に膝をついて手をついて、深々と頭を下げたのだった。
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