死の惑星に安らぎを

京衛武百十

文字の大きさ
8 / 120

グローネンKS6

しおりを挟む
アレクシオーネPJ9S5がいくら戦闘能力を持つと言っても、あくまでも要人警護の任務で必要な程度のものである。純粋な戦闘用であるグローネンKS6が相手ではさすがに敵う筈もなかった。そこで彼女は戦うことを避け、逃走を図った。だが、グローネンKS6は、そんな彼女を追ってきた。

アレクシオーネPJ9S5の最高速度は、整備された舗装路であれば時速百キロ。自動車並みの速度が出る。荒れ地などではむしろ自動車よりも早い場合もある。しかし、グローネンKS6の最高速度は、戦闘形態で時速百五十キロ。バイクに似た高速移動形態となれば時速二百キロまで出る。逃げ切れる筈もない。

サバンナでライオンに襲われた人間のように、彼女はなすすべなくその牙に捉えられ、見る間に原型を失っていった。非常に高い防弾性能を持つ外装も、超振動ブレードの牙や爪の前には生身とさほど違わない。だが、完全に機能を失う直前に繰り出したナイフがグローネンKS6の装甲の隙間に滑り込み、メインフレームを傷付けた。

「キピ…ッ!?」

小さな鳴き声のような音を発しつつグローネンKS6の戦闘モードが破壊され、別系統だった通常モードに切り替わり、攻撃衝動に従う獣そのものだった姿が、文字通り<借りてきた猫>のように大人しくなったのだった。

しかし時すでに遅く、アレクシオーネPJ9S5は完全に破壊され、機能を失っていた。

「……」

グローネンKS6は作業用マニュピレータを伸ばし、彼女の後頭部からバックアップ用のメモリーカードを取り出し、自らのスロットに挿入した。ウイルス等の驚異を調べ対処するので少し時間はかかったが、彼女に与えられた任務と状況を理解し、まるで彼女の無念を悼むかのようにこうべを垂れてその場にとどまった。

「……!」

だが、日が完全に落ちた頃、グローネンKS6は立ち上がり、闇の中を走り始めた。途中でCLS患者と遭遇するとその頭部を破壊して処置し、さらに走った。

やがて目的地に辿り着いたのか速度を落とし歩くグローネンKS6の前にあったのは、<自殺>した先任のアレクシオーネPJ9S5の残骸だった。彼女の拠点へとやって来たのだ。

「……」

挨拶をするかのようにアレクシオーネPJ9S5の残骸の前で座り再び頭を垂れたグローネンKS6は、そのままそこで動かなくなった。

それから数日が立ち、

「……!」

何かに気付いたらしいグローネンKS6が頭を上げて視線を向けると、そこには一人の女性、いや、メイトギアが立っていた。主がいなくなった拠点を利用する為にこちらに向かってきた、新しい<廃棄品>である。

彼女の名はフローリアCS-MD9。白人系の外見をもっていたアレクシオーネPJ9S5よりはややエキゾチックな印象のあるメイトギアであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...