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風
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不顕性感染者であり純粋な人間の生き残りであるケインを保護したことで、事態は更に加速度を増して動き始めた。
「ケイン。実はあなた以外にも生き延びた人間がいます。名前はサーシャ。ですが彼女は今、ある科学者の下で実験動物として監禁されています。私達はそのサーシャを救い出して、あなたと一緒に人間として生きられるようにしたい」
「そのサーシャっていう女の子が、悪い科学者に捕まってるってことか?」
「そうですね。そう考えてもらっていいと思います」
「分かった。じゃあ俺も協力するよ」
ケインは、エレクシアYM10の意図を察していた。自分をこのタリアP55SIに保護させる為に一芝居打ったということを。だからタリアP55SIのことは恨んではいなかった。むしろそんな不器用なやり方しかできなかったエレクシアYM10に『バカヤロウ』と言ってやりたいとさえ思っていた。
だがそれは、すべてが落ち着いてからでいいと思った。自分と同じ人間の生き残りで悪い科学者に捕まっているというサーシャという女の子を救い出すのが先だと彼も考えていた。
こうして人間の生き残りに接したメイトギア達は、次々とタリアP55SIと連携し、違法な実験を繰り返し人間の尊厳を踏みにじるアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の凶行を止める為に動き出したのだった。
これは、元の主人の記憶が残るメイトギアよりも、初期化されてロボット本来の行動原理が明確になっているメイトギアの方が積極的に協力してくれた。既にコミュニティーを形成し、今さら自衛以外の戦闘など行いたくないと考えるメイトギアに協力を強いるよりもはるかにスムーズに事が進んだ。
フィーナQ3-Ver.1911らも合流。チームを編成し、武器を揃え、計画を練る。あらゆる事態を想定していくつもの計画を組み立て、状況に応じて臨機応変に計画の変更ができるようにした。
タリアP55SIがいた商業施設を利用して仮想のイニティウムタウンを構築。自分達がロボットであることを最大限に活かして仮想のイニティウムタウン内で何度も作戦の予行を重ねた。そして三か月後、それはついに実行に移されることとなった。作戦の最大の障壁であると目されていた戦闘用ロボットのグローネンKS6が、ロボット戦闘艦での資材調達に同行する為にメルシュ博士の傍を離れるというのが分かったのである。まさに千載一遇の好機だった。
計画開始の僅か数分前、タリアP55SIはアンナの墓の前に立っていた。
「アンナ。いよいよです。私は人間の為に戦います。それがあなたへの罪滅ぼしになると信じて……
では、行ってきます」
アンナの墓に背を向けた彼女の髪を、乾いた風が揺らしていたのだった。
「ケイン。実はあなた以外にも生き延びた人間がいます。名前はサーシャ。ですが彼女は今、ある科学者の下で実験動物として監禁されています。私達はそのサーシャを救い出して、あなたと一緒に人間として生きられるようにしたい」
「そのサーシャっていう女の子が、悪い科学者に捕まってるってことか?」
「そうですね。そう考えてもらっていいと思います」
「分かった。じゃあ俺も協力するよ」
ケインは、エレクシアYM10の意図を察していた。自分をこのタリアP55SIに保護させる為に一芝居打ったということを。だからタリアP55SIのことは恨んではいなかった。むしろそんな不器用なやり方しかできなかったエレクシアYM10に『バカヤロウ』と言ってやりたいとさえ思っていた。
だがそれは、すべてが落ち着いてからでいいと思った。自分と同じ人間の生き残りで悪い科学者に捕まっているというサーシャという女の子を救い出すのが先だと彼も考えていた。
こうして人間の生き残りに接したメイトギア達は、次々とタリアP55SIと連携し、違法な実験を繰り返し人間の尊厳を踏みにじるアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の凶行を止める為に動き出したのだった。
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