死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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ゴードン・メルクリウス

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「博士。あのサーシャとかいう人間、どうなさるおつもりですか?」

タリアP55SIとフィーナQ3-Ver.1911がそれぞれある種の決意を固めている頃、いつもの如く血まみれでCLS患者の解剖を行っていた全裸のロボットの体を持った方のメルシュ博士に、助手を務めていたリリアテレサが訪ねていた。

「ん? 別にどうもしない。これまで通りだよ。せいぜい実験の役に立ってもらうさ」

DNAと精子の採取を済ませた、十二歳くらいの少年のCLS患者の体をバラバラに刻み、それを念入りに調べながら博士は片手間でリリアテレサに応える。だがその口元には、邪悪とも思える笑みが張り付いていた。

その一方で、イニティウムタウン内の官邸として利用されている住宅の部屋では、フィリス・フォーマリティと白衣を纏った生身の方の博士が紅茶を飲みながら町の状況について話し合っている姿があった。

イニティウムタウンの建設が始まってから約二年。周囲に張り巡らされた壁と柵により安全は確保され、子供達に教育を施す為に作られた<スクール>も順調で、それぞれの家庭では家内制手工業的に様々な物品の生産が始まり、町の外には畑が広がり、専用の設備が必要な工業製品を生産する為の工場も稼働し始めた。メイトギアを除いた人口は三百人に届こうとしている。

サーシャももうすぐ十三歳になろうとしていた。サーシャと同世代の子供として生み出されたクローン達も共にスクールに通い、自らの目と耳と皮膚で知識を得、他者と交流することで自我を確立させて健やかに成長し、次世代を担う存在として確かな力を身に付けていった。メイトギア人間やCLS患者を母体として生まれた赤ん坊達も、よちよち歩きを始めてまさに可愛い盛りだった。しかも、その後も引き続き次々と赤ん坊は生まれている。

クローンと、人工授精による赤ん坊たちは、メイトギア人間とは違い肉体的には普通の人間である。となれば当然、サーシャと同じ年頃の子供として生み出されたクローン達には思春期ならではの肉体の変化も現れ、ホルモンが心理にも影響を与える。純粋な人間であるサーシャももちろん大人の女性への変化を見せ始め、同学年の少年達の中には彼女に恋心を抱く者も現れ始めた。

その中の一人、ゴードン・メルクリウスは、恐らく特に強い気持ちを抱いていただろう。なお、余談ではあるが、ゴードン・メルクリウスという名前は、メルシュ博士が思い付きでつけただけのものなので特に意味はない。

そんなゴードンは、体は大きいが気持ちの優しい穏やかな気性の少年だった。

「サーシャ、一緒に帰ろうか」

授業が終わり、女子生徒達に囲まれておしゃべりを楽しんでいた彼女に、彼はそう声を掛けたのだった。

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