あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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半端者か

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『やっぱり女としての魅力が足りないからかなあ……』

今日は首尾よく早々に獲物を捕らえられたので昼過ぎには家に戻り、家の近くを流れる沢で水浴びをしつつ自分の体に触れながら、イティラはそんなことを考えていた。

ウルイが自分を女性として見てくれないのは、やはり<女の魅力>が足りないからだと。

しかし、ウルイの反応を見ているからそう感じるだけで、実はイティラ自身の発育は順調で、確かに成熟した<大人の女性>ほどではなくても、すでに色香を放ちつつあった。ましてや今は、水に濡れた毛皮が滴を滴らせながらぴったりと体に張り付き、女性らしさを得つつある体のラインがはっきりと浮き出ている。

まるで、芸術品のような、思わず目が奪われそうになるほどの美しさがある。

しかも、ウルイがまったく気にしていないので逆にイティラの方も意識していないのだが、実際には意図して<慎み深く>していないと普通の男性なら十分に惑わされる程度には、<女性としての匂い>を放ってもいるのだ。

この世界では基本的に十五歳前後で成人の仲間入りを果たすことになるので、十三くらいともなればすでに婚約者や結婚を前提に付き合っている相手がいてもなにもおかしくないという事情もある。

要するに、

『ウルイが普通じゃない』

というだけなのだ。五歳かそこらでこの森に捨てられたイティラでさえ、ウルイが普通じゃないことは何となく察している。

が、先日はじれったさについ感情的になってしまったものの、イティラ自身が<普通>ではなく、なのにそんな普通じゃない自分を受け入れてもらっていることで、ことさら強くその点を責めるつもりもなかった。

『そんなことで怒られたってウルイも困るよね……』

ウルイから気遣いや相手を敬うことを学んだ彼女は、そういう風に考えることもできる。

とは言え、

『いったいどうしたらウルイをその気にさせることができるんだろ……』

なんてことも考えてしまう。

が、その時、

「!?」

馴染みのない<気配>を察し、イティラは沢から飛び出して身構えた。彼女に送れて舞った滴がキラキラと光を放ち、彼女を彩っているかのようだ。

けれどそんな美しさとは裏腹に、イティラの表情は険しい。その彼女が視線を向ける先、イティラとウルイの家に向かうのとは反対側の斜面に、<何か>がいる。

ただ、イティラには覚えのある<匂い>だった。

『獣人……っ!?』

そう。獣人の匂いだ。しかし、キトゥハとは明らかに違う。別の知らない獣人の匂い。

すると、斜面の茂みの中から、

「お前、何でそんな姿をしている……?」

硬い口調で詰問する声。

若い、声変わりして間もない感じの、成人になったばかりかどうかという男の声。

「……」

おそらく、人間でも獣でもない姿をしているイティラを訝しんで問うてきたのだろうとは察せられるものの、彼女はそれには応えなかった。応える気になれない問い掛け方だったからだ。

するとその声の主は、

「そうか、半端者か……」

明らかに嘲りが込められた口調で、呟いたのだった。

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