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あ~もう、あの子は~
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「おはようございます」
翌朝、いろいろ心配でとにかく達さんの顔が見たくて会社の正門前で待ってると、彼の姿が見えて私は自分がホッとするのを感じてた。でも。
「玲那はまだ来てない?」
私の顔を見るなり彼がそう尋ねてくる。
「何かあったんですか?」
ちょっと不安になってそう訊き返してしまった。すると彼は、
「実はアパートを出たところで、隣の部屋の人と鉢合わせたんだけど、なんかアニメの話で盛り上がりだしてね。先にバスで来たんだ」
だって。
「あ~もう、あの子は~…!」
私は思わず頭を抱えてた。何やってんの、玲那。
「好きなアニメのことになると周りが見えなくなるのって、ホント病気ですよね。いいです、私が待っておきますから山下さんはこのまま仕事に行ってください」
「ごめん。じゃあ、そうさせてもらうよ」
そうして彼を見送って五分ほどして、車道を結構なスピードで走ってくる黒い自転車が見えた。玲那だ。
減速して歩道に乗り上げて自転車を降りた彼女は、やけにご機嫌な様子だった。よっぽど飛ばしてきたのかはあはあと息を切らしつつ、でも顔が緩みっぱなしでヘラヘラ笑ってる。
「どうしたの?」
だいたいの状況は彼から聞いてたから想像はつくけど、一応訊いてみる。
「あのね~。沙奈子ちゃんとこの部屋の隣の秋嶋さんって人がね、『竜の記界』好きだったんだ~♡」
だって。
……なにそれ…?。
『竜の記界』というのは、玲那がずっと好きなアニメの一つで、彼女にとってはある意味では初恋の相手、って言うかキャラクターが出てきて、しかも三代目黒龍号の名前の基になったキャラクターも出てくるっていうのだった。
あまり有名なアニメじゃなかったそうで詳しい人が少なくて、でもその<滅多にいない人>が、達さんと沙奈子ちゃんの部屋の隣に住んでたって。
しかもかなりのコアなファンだってことですっかり意気投合したんだとか。
まったくもう……。
昼休み。社員食堂で彼と合流した途端、
「てへ♡ ごめんなさい。『竜の記界』のことを知ってる人に久しぶりに会ったからテンション上がっちゃって」
開口一番、玲那がそう言って頭を掻く。
「てへ♡ じゃないでしょ?。遅刻ギリギリで息切らせて飛び込んできたクセに!」
私はまるで母親みたいに玲那を叱ってた。だけどその後で彼女が言ったことに、達さんと一緒に唖然としてしまったのだった。
「秋嶋さんの話によるとね、例の虐待の嘘の通報、七号室の樫牧って人の仕業だったらしいんだ」
翌朝、いろいろ心配でとにかく達さんの顔が見たくて会社の正門前で待ってると、彼の姿が見えて私は自分がホッとするのを感じてた。でも。
「玲那はまだ来てない?」
私の顔を見るなり彼がそう尋ねてくる。
「何かあったんですか?」
ちょっと不安になってそう訊き返してしまった。すると彼は、
「実はアパートを出たところで、隣の部屋の人と鉢合わせたんだけど、なんかアニメの話で盛り上がりだしてね。先にバスで来たんだ」
だって。
「あ~もう、あの子は~…!」
私は思わず頭を抱えてた。何やってんの、玲那。
「好きなアニメのことになると周りが見えなくなるのって、ホント病気ですよね。いいです、私が待っておきますから山下さんはこのまま仕事に行ってください」
「ごめん。じゃあ、そうさせてもらうよ」
そうして彼を見送って五分ほどして、車道を結構なスピードで走ってくる黒い自転車が見えた。玲那だ。
減速して歩道に乗り上げて自転車を降りた彼女は、やけにご機嫌な様子だった。よっぽど飛ばしてきたのかはあはあと息を切らしつつ、でも顔が緩みっぱなしでヘラヘラ笑ってる。
「どうしたの?」
だいたいの状況は彼から聞いてたから想像はつくけど、一応訊いてみる。
「あのね~。沙奈子ちゃんとこの部屋の隣の秋嶋さんって人がね、『竜の記界』好きだったんだ~♡」
だって。
……なにそれ…?。
『竜の記界』というのは、玲那がずっと好きなアニメの一つで、彼女にとってはある意味では初恋の相手、って言うかキャラクターが出てきて、しかも三代目黒龍号の名前の基になったキャラクターも出てくるっていうのだった。
あまり有名なアニメじゃなかったそうで詳しい人が少なくて、でもその<滅多にいない人>が、達さんと沙奈子ちゃんの部屋の隣に住んでたって。
しかもかなりのコアなファンだってことですっかり意気投合したんだとか。
まったくもう……。
昼休み。社員食堂で彼と合流した途端、
「てへ♡ ごめんなさい。『竜の記界』のことを知ってる人に久しぶりに会ったからテンション上がっちゃって」
開口一番、玲那がそう言って頭を掻く。
「てへ♡ じゃないでしょ?。遅刻ギリギリで息切らせて飛び込んできたクセに!」
私はまるで母親みたいに玲那を叱ってた。だけどその後で彼女が言ったことに、達さんと一緒に唖然としてしまったのだった。
「秋嶋さんの話によるとね、例の虐待の嘘の通報、七号室の樫牧って人の仕業だったらしいんだ」
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