獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

弱者だから何もできない

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<戦い>というものは、確かに<運>によって左右されることもあります。ですがそれは文字通りの<まぐれ>。勝った方の実力などではありません。

『運も実力の内』

とも言われますけど、その一回の戦いにさえ勝てばいいならまだしも、何度も戦わなければいけない時には、その<運>が毎回続く保証はまったくないですよね?

だから軍では厳しい訓練も行いますし、事前の準備を怠らないんです。<運>で左右されてしまう部分を徹底的に削るために。運頼みで戦っているような者が部隊にいては、他の隊員まで危険に曝されます。そんなことを許すわけにはいかないんです。

『強いから勝つ』

当たり前の話です。勝てるように自らを鍛え上げ準備する。当然のことじゃないですか。それを怠り運頼みで挑むのは個人の勝手ですが、その巻き添えを受けるのはまっぴらごめんです。

弱者が強者に勝てることはまずない。勝てたとしたのならそれは、

<弱者のようにも見える強者>

なんです。だってそうでしょう? 幼い子供だって拳銃を使えば大人すら殺すことができる。子供は確かに弱者だったのでしょうが、拳銃を手にした瞬間に力関係は逆転したんです。

まあ、だからといって、割り切ってしまえないのも人間というものですが……

私達に銃を向けたテロリストの少年のことは、今も割り切れていません。私達を殺傷することができる銃を手にしていた時点で、そのテロリストの少年はただの<弱者>などではありませんでした。私達と対等な立場にいる存在だったんです。

それでも、私が生き延び、少年は死んだのですから、私の方が強かったのも事実でしょう。でも、あの時のテロリストの少年は、ただの弱者ではなかった……

『弱者だから何もできない』

というのは、ただの思い込みです。自分自身を基準にしてそう思い込んでいるだけに過ぎない。

子供を前にして、

『自分を凌駕する力など持ってるはずがない』

と侮れば、子供が手にした拳銃で呆気なく殺されることだってあるんです。

目が見えないことはハンデなのは事実だとしても、だからといって『何もできない』と侮るのは違います。光などほとんどない暗闇で獣蟲じゅうちゅうを圧倒する伍長がそれを口にすると、途轍もない説得力ですね。

彼自身がいくらゴリラ並の力を備えていようとも、相手を捉えることができなければ、力を発揮することができない。目では相手を捉えられなくても、彼はそれ以外の感覚で相手を『見る』んです。

震電にそれと同じことができるかできないかは、彼女が実際に育ってみないと分かりません。

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