ネコナマナ ~マナちゃんのニャオンな日常~

京衛武百十

文字の大きさ
99 / 104

想いの表し方も人それぞれ

しおりを挟む
真猫まな日葵ひまり、琴羽の三人が一緒に笹蒲池家の母屋に集まるようになったところだというのに、時間の経過というのは残酷なものである。

三月。日葵ひまりの卒業が近付いていたのだ。真猫まなは十二歳だが一年生という扱いなので、当然、卒業はしない。

卒業式に出席するのは六年生と、在校生を代表した五年生だけだった。つまり、日葵ひまりは卒業生、琴羽は在校生という形で出席する。

「ま、短い付き合いだったけどさ、せっかくだからちゃんと見送ったげるよ」

琴羽はそう言うが、当の日葵ひまりは、

「…?」

とあまりよく分かっていない様子だった。

日葵ひまりには、<卒業>というものがいまいち分からないのだ。同じことを淡々と繰り返すのは得意だが、急に状況が変わるとそれに対応できず、その場にとどまってしまうことがあるのが彼女の<特徴>だった。

「こりゃダメだ。卒業式の後も学校に来ちゃうんじゃないの?」

その琴羽の指摘に、玲那は、

「かもしれませんね」

と微笑んだ。

玲那もそれは十分に承知していた。だからその為の準備をしてある。各教員に申し送りをし、もし日葵ひまりが学校に来てしまったら両親に連絡するということを。



卒業式当日。六年生と五年生以外の生徒は本来ならば自宅学習なのだが、真猫まなを含む学習が非常に遅れていた一部の生徒は、それぞれ教師がつき各々の教室で授業を行っていた。

すると、卒業式が終わった後、冠呂日葵かむろひまりが教室に戻ってきて、「真猫まなちゃん」と声を掛けてくる。卒業式を終えた後だというのにその様子は普段とまるで変りなかった。

やはり日葵ひまりには<別れ>というものがあまり理解できていないらしい。中学に進学するのも、教室が変わるくらいにしか認識していないようだった。だから悲しんだり感傷的になったりもしない。中学に行っても、気の合う相手を見付ければまた同じように一緒にいたりするのだろう。

別れを悲しまないことを薄情だと考える向きもあるかも知れない。だが、目の前の事象をどう捉えるかはそれぞれの問題だ。日葵ひまりは自分が置かれた状況をただ受け止めるだけなのだ。よほど自分にとって不快なものでない限りは。例え教室が別々になっても、ここに来ればまた会えると日葵ひまりは思っているだけだった。

そして、案の定、翌日も日葵ひまりは、いつものように教室に来ていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...