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トーイの章

三日目の朝

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そして三日目の朝……

「……」

ベッドに頭を押し付けて居眠りしてた俺は、なにかの気配を察してハッとなった。頭を上げると、トーイが俺を見詰めてる姿。

瞬間、

「よかった……トーイ、本当によかった……!」

俺の声にリーネもハッと飛び起きて、

「トーイ! もう大丈夫……!?」

と問い掛ける。それに対しては、

「うん……」

と応えてくれた。俺に応えてはくれなかったのなんかどうでもいい。さすがに目は落ちくぼんだ感じになって頬もこけた様子だったが、血色そのものは悪くない。しかも、

「おなかすいた……」

と言ってくれた……! 食欲があるんならもう大丈夫だろう。

「分かった。すぐに用意するね!」

リーネもベッドから下りて、竈に火を熾し、残ったスープに火を通し始めた。

スープの用意ができるまでの間、俺はトーイの様子を改めて確かめる。

「まだ手は痛いか……?」

その問い掛けには頷くが、

「手以外に痛いところはあるか? 気分は悪くないか?」

この問いかけには頭を横に振る。

ああ……なら、本当に大丈夫なんだろう……俺はホッとしてベッド脇に置いた椅子に座り込む。

前世じゃ、実の娘のゆかりに対してさえ感じたことのない感覚。

『生きててくれてありがとう……』

って素直に思う。血が繋がってるとか繋がってないとか、そんなことは知ったことじゃない。俺は今、心底嬉しいんだよ。目の前の命を守れたことが。

正直、運が良かっただけかもしれない。俺には医学的に正しい知識なんてなかった。こっちで聞いたのをただ実践しただけだ。だから実際には正しくないやり方もあったかもしれない。でも、トーイはそれを生き延びた。その事実さえあればいい。

そして温め直したスープをリーネが持ってきてくれる。匙で掬い、ふーふーと息を吹きかけて冷まし口元に持っていくと、トーイがそれをすすってくれた。

「おいしい……」

と口にした彼に、リーネはさらに次のスープを。

その光景を見守りつつ、俺は自分の表情が緩んでるのを実感していた。

こんな気分、前世じゃ一度も味わえなかった。ゆかりが生まれた時でさえ、

『やれやれ…これで面倒臭くなるな……』

なんて思っただけだった。なのに今の俺は、自分と血も繋がってない、まだ出逢って日も浅い、俺に懐いてもいないトーイの命が失われなかったことを喜んでる。嬉しいと感じてる。幸せだと感じてる。

そうだ。俺はすごく幸せなんだ。

あはははは……なんでこんな簡単なことが前世の俺にはできなかったんだ……?

まったくよ……

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