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暮らしの章

あくまで俺に責任がある

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『いつの時代も人の世ってのは楽じゃない』

単純にそういう話だよな。隣の芝生を青いと妬んでも問題は何も解決しない。自分の人生は自分のものだ。自分で対処するしかないんだ。誰かがどうにかしてくれるわけじゃない。

それは事実だと思う。だからこそ、子供の内に甘えられるだけ甘えて、必要なことは学んでもらって、大人になってからおたおたせずに済むようになってもらうのは親の役目だって思う。

<必要なことを学んでもらうのも、親の役目>

ってこったな。それをサボっておいて子供に、

『努力しろ!』

とか、『努力してない』のは親の方だっての!

すると、リーネだけじゃなくトーイも、竈の扱い方がみるみる手際良くなっていった。危なっかしさがマシになっていったんだ。そしていよいよ、本格的にナイフも使い始めてもらう。まずは俺の見てる前で、リーネが丁寧に教えてくれる。

リーネに任せてしまえばいいだろうと思うかもしれないが。これは、

<責任の所在>

ってものをはっきりさせるために必要なんだ。監督者としてあくまで責任は俺にある。何か事故が起こっても、親が、大人が、ちゃんと責任を負うという姿勢を子供に示すんだ。

こっちでもそうだが、前世でもたいがい、自分じゃ責任を負いたがらない大人が多かっただろう? それは結局、子供の頃から、

<ちゃんと責任を負う大人の姿>

を間近で見てなかったからだと俺は思うね。だから『責任を負う』ってのがどういうことか実感として身に付いてないってことだろうさ。

『面倒臭い』

からってまだ子供であるリーネに丸投げして、何か事故があった時には、

『お前が悪い!』

とリーネを責めてて何が<大人>だ。大人が負うべき責任を子供に丸投げしてて、<責任を負う姿>を子供に示せるか! 学んでもらえるか!

『面倒臭い』からって手を抜いて、それで子供が手抜きを覚えないとなぜ思える?

と、俺は学んだよ。

「待て! ナイフはちゃんと置いてから次の作業にかかれ」

リーネが食材の様子に気を取られている間にトーイがナイフを手に持ったまま横着をしようとしたのを、俺は見咎めた。

「は、はい……!」

トーイがそれに従ってナイフを置いて、

「ごめんなさい! 私がちゃんと見ておけば」

リーネが謝るが、

「ああ、次からは気を付けてくれたらいい」

俺はあくまで俺に責任があるということで、そう言わせてもらった。ここで責任をリーネに丸投げしてたら、

『お前がちゃんと見てないから!』

とか言ってしまうだろうが、前世の俺なら間違いなくそう言うだろうが、今はそんな言い方をしたいとは思わないんだ。

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