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人生の章

アーク家では

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「イヤだあ~……! ああああ~っ!」

大きな声で言いながら泣くマリーチカも、幼いながら決していい加減な気持ちでトーイのことを好きだと言ってたわけじゃないのが感じられた。

無理もないか。継父に愛されず、実の母親にも愛されず、『要らない』と捨てられて俺のところに来ることになった彼女にとっては、トーイの傍にいられることが唯一の心の支えだったんだろうからな。だからそうやって駄々をこねるのをやめろとは言わない。ちゃんと感情をぶちまけてくれる方がいい。

同時にカーシャも、

「うえええ~……!」

大変にブサイクな表情かおで泣いて、何度も涙を拭ってた。こちらも想いそのものは真剣だったんだろう。

もちろん、どちらも時間が経てばまた気持ちが変わっている可能性はあった。実際、カーシャは、

татоタートとけっこんする♡』

みたいなことを言ってくれてたのが、今はトーイを好きになってたんだからな。でも、そんな先のことは今はどうでもいい。今この時点で二人がトーイを好きだというその気持ちが大事なんだ。その気持ちを疎かにするのは、二人を人間として扱ってないということになる。

俺は、それは嫌だ。

しかし同時に、だからといってリーネとトーイに自身の気持ちを捻じ曲げろというのも違うと思う。少なくとも『アーク家では』それは違うんだ。さらには、

「わあああ~……!」

泣きじゃくるマリーチカとカーシャにつられてか、マリヤまで泣き出した。今の時点ではイワンのことが好きなマリヤにとってはむしろ喜んでもいい状況ではあるものの、マリーチカとカーシャの感情にてられたんだろう。優しい子なんだよ。マリヤは。

だから俺は、マリーチカとカーシャとマリヤの三人を一度に抱き締めた。そうして、

「つらいよな……悲しいよな……ありがとう…そんだけ泣けるくらい人を好きになれる子でいてくれてありがとう……みんな俺の自慢の子供達だ……」

そうだ。俺は、物心ついた頃にはもう、斜に構えて世の中を嘲ってるような<ひねた子供>だった。誰かのことを本気で好きになった記憶はない。少なくとも、自分の想いが届かないからといってこんなに泣いた覚えがない。

『俺のことを好きにならないような女なんかクソだ!』

とか、阿久津安斗仁王あんとにおは本気で思ってた。自分は誰かを本気で愛したことなんかなかったクセにな。あいつが口にする『愛してる』は、

『俺にとって都合のいい道具になりやがれクソ女』

って意味だった。はは……本当にどうしようもないバカヤロウだよな……

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