宿角玲那の生涯

京衛武百十

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宿角玲那編

エピローグ

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宿角玲那すくすみれいなの死刑が執行されたことを伝えるニュース速報のテロップがテレビ画面に出たのを、何の偶然か因縁か、三人の人間が同時に見た。

「ふ~ん、死刑が執行されたんだって。姉さん」

「そうなんだ? でも、別にどうでもいいよ。悪い奴はどんどん死刑にしちゃってくれていいと思うし」

この時、久しぶりに姉妹で一緒の仕事が入ったことで同じ楽屋で準備をしていた二人の<女優>が、そう言葉を交わした。いつもならそれこそ気にもしないそのテロップが何故目に止まったのか二人は気付くこともなく、ただそれを受け流していた。

そして二人とはまったく関係もないマンションの一室で、ようやく首が据わったばかりと思しき赤ん坊に乳をやっていた女性も、そのテロップを見た。

「……?」

しかしその、一見しただけでは中学生くらいにも見えてしまう女性は、引き付けられるようについ画面を見てしまってテロップを確認したというのに、それこそ何も思うことなく感じることなく、すぐさま懸命に自分の乳を吸う赤ん坊の姿に視線を戻した。その目は、冷淡なようでいて、どこか慈愛を感じさせる穏やかなものであった。



さらに、宿角玲那すくすみれいなの死刑が執行された数日後……



「彼女の事件の後、ネットではなんだかすごく盛り上がってたらしかった。彼女と被害者のことだけじゃなくて、彼女の親戚のことまでいろいろと暴露されて晒されてたのは僕も見た。

彼女のことを<玲那姫>とか呼んでるのがいるらしくて、そいつらが彼女を擁護する為に彼女の境遇がいかに悲惨だったかっていうのをアピールしてたらしい。よくやるよって思った。

でも、僕も何年か前まではネットでコメントとかしてた。

それで思い出したんだ。彼女の事件の被害者の一人で、僕がまだ中学かそこらだった頃に伯父を殺してニュースになった来支間敏文(きしまとしふみ)っていうのの個人情報とかが晒されてた時、僕もそれの拡散に手を貸したなって。

今はもうそんなことしてない。僕も大人になってそういうの馬鹿馬鹿しいって思うようになったし。あの頃は中学生だったからね。まさに中二病全開だったって感じかな。

今では宿角玲那に同情もするよ。酷い目に遭ってきたんだろうからさ。だからそうならない為のifがどこかにあったんじゃないかってそういう風にも思うし。

ただ、僕が何かしてあげようっていうのは、さすがに無理かな。

だって、僕は友達でもなんでもなかったからね」



これは、小学校で彼女と同級だったある人物が、取材に来た新聞記者を相手に語った内容の一部である。

小学校の頃の宿角玲那を辛うじて覚えていた者でもこの感じだった。

中学高校の頃になるとレスリング部にも所属していた為にもう少し彼女のことを覚えている者もいたが、それでも<友人>と呼べる者はいなかっただろう。アルバイト先でも同様だった。彼女は自らの存在を消そうとでもするかのように、目立たず息をひそめて黙々と自分の仕事だけをこなしていたのだから。

本当に、彼女は何の為に生まれてきたのか…? 

性の道具にされる為か? 

それとも人を殺す為か?

それに答えられる人間はこの世界にはいない。何故なら誰も、それに答えられるほども彼女のことを知らないのだから。

ただ、ネット上には、彼女を<姫>と称して崇拝していた者達が残したページが、宿角玲那という存在の残滓のように辛うじて残されていたのだった……

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