39 / 39
宿角玲那編
エピローグ
しおりを挟む
宿角玲那の死刑が執行されたことを伝えるニュース速報のテロップがテレビ画面に出たのを、何の偶然か因縁か、三人の人間が同時に見た。
「ふ~ん、死刑が執行されたんだって。姉さん」
「そうなんだ? でも、別にどうでもいいよ。悪い奴はどんどん死刑にしちゃってくれていいと思うし」
この時、久しぶりに姉妹で一緒の仕事が入ったことで同じ楽屋で準備をしていた二人の<女優>が、そう言葉を交わした。いつもならそれこそ気にもしないそのテロップが何故目に止まったのか二人は気付くこともなく、ただそれを受け流していた。
そして二人とはまったく関係もないマンションの一室で、ようやく首が据わったばかりと思しき赤ん坊に乳をやっていた女性も、そのテロップを見た。
「……?」
しかしその、一見しただけでは中学生くらいにも見えてしまう女性は、引き付けられるようについ画面を見てしまってテロップを確認したというのに、それこそ何も思うことなく感じることなく、すぐさま懸命に自分の乳を吸う赤ん坊の姿に視線を戻した。その目は、冷淡なようでいて、どこか慈愛を感じさせる穏やかなものであった。
さらに、宿角玲那の死刑が執行された数日後……
「彼女の事件の後、ネットではなんだかすごく盛り上がってたらしかった。彼女と被害者のことだけじゃなくて、彼女の親戚のことまでいろいろと暴露されて晒されてたのは僕も見た。
彼女のことを<玲那姫>とか呼んでるのがいるらしくて、そいつらが彼女を擁護する為に彼女の境遇がいかに悲惨だったかっていうのをアピールしてたらしい。よくやるよって思った。
でも、僕も何年か前まではネットでコメントとかしてた。
それで思い出したんだ。彼女の事件の被害者の一人で、僕がまだ中学かそこらだった頃に伯父を殺してニュースになった来支間敏文(きしまとしふみ)っていうのの個人情報とかが晒されてた時、僕もそれの拡散に手を貸したなって。
今はもうそんなことしてない。僕も大人になってそういうの馬鹿馬鹿しいって思うようになったし。あの頃は中学生だったからね。まさに中二病全開だったって感じかな。
今では宿角玲那に同情もするよ。酷い目に遭ってきたんだろうからさ。だからそうならない為のifがどこかにあったんじゃないかってそういう風にも思うし。
ただ、僕が何かしてあげようっていうのは、さすがに無理かな。
だって、僕は友達でもなんでもなかったからね」
これは、小学校で彼女と同級だったある人物が、取材に来た新聞記者を相手に語った内容の一部である。
小学校の頃の宿角玲那を辛うじて覚えていた者でもこの感じだった。
中学高校の頃になるとレスリング部にも所属していた為にもう少し彼女のことを覚えている者もいたが、それでも<友人>と呼べる者はいなかっただろう。アルバイト先でも同様だった。彼女は自らの存在を消そうとでもするかのように、目立たず息をひそめて黙々と自分の仕事だけをこなしていたのだから。
本当に、彼女は何の為に生まれてきたのか…?
性の道具にされる為か?
それとも人を殺す為か?
それに答えられる人間はこの世界にはいない。何故なら誰も、それに答えられるほども彼女のことを知らないのだから。
ただ、ネット上には、彼女を<姫>と称して崇拝していた者達が残したページが、宿角玲那という存在の残滓のように辛うじて残されていたのだった……
「ふ~ん、死刑が執行されたんだって。姉さん」
「そうなんだ? でも、別にどうでもいいよ。悪い奴はどんどん死刑にしちゃってくれていいと思うし」
この時、久しぶりに姉妹で一緒の仕事が入ったことで同じ楽屋で準備をしていた二人の<女優>が、そう言葉を交わした。いつもならそれこそ気にもしないそのテロップが何故目に止まったのか二人は気付くこともなく、ただそれを受け流していた。
そして二人とはまったく関係もないマンションの一室で、ようやく首が据わったばかりと思しき赤ん坊に乳をやっていた女性も、そのテロップを見た。
「……?」
しかしその、一見しただけでは中学生くらいにも見えてしまう女性は、引き付けられるようについ画面を見てしまってテロップを確認したというのに、それこそ何も思うことなく感じることなく、すぐさま懸命に自分の乳を吸う赤ん坊の姿に視線を戻した。その目は、冷淡なようでいて、どこか慈愛を感じさせる穏やかなものであった。
さらに、宿角玲那の死刑が執行された数日後……
「彼女の事件の後、ネットではなんだかすごく盛り上がってたらしかった。彼女と被害者のことだけじゃなくて、彼女の親戚のことまでいろいろと暴露されて晒されてたのは僕も見た。
彼女のことを<玲那姫>とか呼んでるのがいるらしくて、そいつらが彼女を擁護する為に彼女の境遇がいかに悲惨だったかっていうのをアピールしてたらしい。よくやるよって思った。
でも、僕も何年か前まではネットでコメントとかしてた。
それで思い出したんだ。彼女の事件の被害者の一人で、僕がまだ中学かそこらだった頃に伯父を殺してニュースになった来支間敏文(きしまとしふみ)っていうのの個人情報とかが晒されてた時、僕もそれの拡散に手を貸したなって。
今はもうそんなことしてない。僕も大人になってそういうの馬鹿馬鹿しいって思うようになったし。あの頃は中学生だったからね。まさに中二病全開だったって感じかな。
今では宿角玲那に同情もするよ。酷い目に遭ってきたんだろうからさ。だからそうならない為のifがどこかにあったんじゃないかってそういう風にも思うし。
ただ、僕が何かしてあげようっていうのは、さすがに無理かな。
だって、僕は友達でもなんでもなかったからね」
これは、小学校で彼女と同級だったある人物が、取材に来た新聞記者を相手に語った内容の一部である。
小学校の頃の宿角玲那を辛うじて覚えていた者でもこの感じだった。
中学高校の頃になるとレスリング部にも所属していた為にもう少し彼女のことを覚えている者もいたが、それでも<友人>と呼べる者はいなかっただろう。アルバイト先でも同様だった。彼女は自らの存在を消そうとでもするかのように、目立たず息をひそめて黙々と自分の仕事だけをこなしていたのだから。
本当に、彼女は何の為に生まれてきたのか…?
性の道具にされる為か?
それとも人を殺す為か?
それに答えられる人間はこの世界にはいない。何故なら誰も、それに答えられるほども彼女のことを知らないのだから。
ただ、ネット上には、彼女を<姫>と称して崇拝していた者達が残したページが、宿角玲那という存在の残滓のように辛うじて残されていたのだった……
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる