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楽園喪失
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燻蒸式の殺虫剤は、ある一定の空間を完全に満たし、僅かな隙間からでもその奥まで浸透し、床下や屋根裏のみならず壁の中までも殺虫成分で満たすことがある。
「クソッ、クソッ、クソッ!!」
私は罵りながらも必死で走り、薬剤が届かなくなる場所まで逃げることを優先した。
途中、再びアシダカグモに遭遇したものの、それどころじゃない。敢えて突っ込んでいってスレスレで躱し、さらに先へと逃げる。
私に躱されたアシダカグモも体を翻して追いかけようとしたらしいが、薬剤の方が早かった。
ビクン!と体を反応させて逃げようとしたものの間に合わず麻痺し、そのまま脚を丸めて硬直させて死んでいく気配が伝わってくる。
まったくもってロクでもない!
こんな間抜けな死に方ができるか!!
逃げる! 逃げる! とにかく逃げる!!
結局、何とか薬剤の影響から逃れ切ったのが確認できた時には、私はまったく初めての場所へと来ていた。
逃げながらもなんとかマッピングはできていたのでおおよその位置は分かるが、この屋敷、思っていた以上に広そうだ。
……いや、それはある意味じゃ当然なのか。
人間が普通に住む洋館を模してはいるものの、ここが完全にスペースコロニー的な人工環境であることは推測できる(外はおそらく宇宙空間ではないが)。となれば施設の規模も決して並の邸宅程度ではないだろう。
せっかく見付けた<天国>もしくは<楽園>ではあったが、厨房に撒かれた薬剤の影響が十分に下がるまでは近付くこともできん。さしずめ<楽園喪失>というところか。まあ泣き言を並べても始まらんし、探索を続け新たな<生活の場>を見付けねばな。
この辺りはまた食料に乏しい場所のようだ。幸い、あの給電設備らしき部屋にはネズミの毛や糞を確保してあるから、最悪、そこまで戻れば何とかなる。
そう言えばあの給電設備の規模的にも、工場並みの施設であることは窺えていたか。
いずれにせよ、やるだけやってみるか。
そんなわけで私は、再び、部屋に侵入できるルートを探した。
幸か不幸か、この辺りには他にゴキブリの気配もなく、ゆえにアシダカグモなどの気配もない。しかも、
「む…これは、キノコか……」
床下の部材に張り付くように綿のような物体が。はっきりとした形にはなってないが、明らかに菌類の子実体だ。つまるところ<キノコ>である。
これは僥倖。
私はそのキノコを食い、取り敢えずのエネルギー補給とした。ゴキブリにとっても害のあるキノコの可能性もあったが、匂いからするとエノキダケに間違いない。一般的に知られている形になりそこなったものだろう。
それから改めて探索を再開する。
と、僅かな空気の流れが感知できた。近くに床上に繋がる隙間がある可能性が高い。
そして私はその空気の流れを辿ったのだった。
「クソッ、クソッ、クソッ!!」
私は罵りながらも必死で走り、薬剤が届かなくなる場所まで逃げることを優先した。
途中、再びアシダカグモに遭遇したものの、それどころじゃない。敢えて突っ込んでいってスレスレで躱し、さらに先へと逃げる。
私に躱されたアシダカグモも体を翻して追いかけようとしたらしいが、薬剤の方が早かった。
ビクン!と体を反応させて逃げようとしたものの間に合わず麻痺し、そのまま脚を丸めて硬直させて死んでいく気配が伝わってくる。
まったくもってロクでもない!
こんな間抜けな死に方ができるか!!
逃げる! 逃げる! とにかく逃げる!!
結局、何とか薬剤の影響から逃れ切ったのが確認できた時には、私はまったく初めての場所へと来ていた。
逃げながらもなんとかマッピングはできていたのでおおよその位置は分かるが、この屋敷、思っていた以上に広そうだ。
……いや、それはある意味じゃ当然なのか。
人間が普通に住む洋館を模してはいるものの、ここが完全にスペースコロニー的な人工環境であることは推測できる(外はおそらく宇宙空間ではないが)。となれば施設の規模も決して並の邸宅程度ではないだろう。
せっかく見付けた<天国>もしくは<楽園>ではあったが、厨房に撒かれた薬剤の影響が十分に下がるまでは近付くこともできん。さしずめ<楽園喪失>というところか。まあ泣き言を並べても始まらんし、探索を続け新たな<生活の場>を見付けねばな。
この辺りはまた食料に乏しい場所のようだ。幸い、あの給電設備らしき部屋にはネズミの毛や糞を確保してあるから、最悪、そこまで戻れば何とかなる。
そう言えばあの給電設備の規模的にも、工場並みの施設であることは窺えていたか。
いずれにせよ、やるだけやってみるか。
そんなわけで私は、再び、部屋に侵入できるルートを探した。
幸か不幸か、この辺りには他にゴキブリの気配もなく、ゆえにアシダカグモなどの気配もない。しかも、
「む…これは、キノコか……」
床下の部材に張り付くように綿のような物体が。はっきりとした形にはなってないが、明らかに菌類の子実体だ。つまるところ<キノコ>である。
これは僥倖。
私はそのキノコを食い、取り敢えずのエネルギー補給とした。ゴキブリにとっても害のあるキノコの可能性もあったが、匂いからするとエノキダケに間違いない。一般的に知られている形になりそこなったものだろう。
それから改めて探索を再開する。
と、僅かな空気の流れが感知できた。近くに床上に繋がる隙間がある可能性が高い。
そして私はその空気の流れを辿ったのだった。
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