Gの愉悦

京衛武百十

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別の臭い

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「ぬ…? これは、食い物の匂い……」

僅かな空気の流れを辿って進むと、微かに漂ってくる匂いに思わず反応してしまう。

どうやらまた生ゴミの臭いのようだ。しかし、それに混じって別の臭いも。

まあ、ゴキブリにとってはどちらも食い物の匂いだがな。

とは言え、匂いそのものは決して強くない。厳重に密閉された容器か何かに封入されたものから僅かに漏れ出ている感じだろうか。

だとすれば食糧確保という点ではあまり期待はできんだろうな……

そんなことを思いつつ、空気の流れを伝って隙間を進む。途中、かなり狭くて厳しい部分もあったが、何とか力尽くで強引に通り抜けた。

するとそこは、先の配電室らしき場所のそれとはまた系統の違う機械がみっしりと詰まった部屋だった。

それこそ完全に<工場>といった風情の。

ただ、私は察してしまった。

そこに漂う<臭い>の所為でな。

「死臭か……人間の……」

そうだ。まあ生ゴミの臭いもある意味では死臭とも言えるわけだが、その中でも人間の死体は独特の臭いがする。

私のような者にとってはそれこそ非常に、

<そそられる臭い>

なのだ。

たまらなく甘美な、な。

しかし私の目の前にあるのは、決して<遺体安置所>でもなければ<火葬場>でもない。

およそ人間の遺体など扱うそれとは思えない、機械の羅列。

その中で一際、濃い臭いを発しているのがある。

ちょうど、火葬場の窯の蓋と同じくらいの大きさの蓋によって厳重に閉ざされた機械だった。

しかしそれは決して火葬用の窯などではないことは私には分かってしまう。

破砕機シュレッダーだな……人間用の」

ここが、決して安穏と暮らしていられるような環境でないことは、まるでスペースコロニーのような人口環境であることからすぐに察しがつく。

となれば、何一つ無駄にはできまい。

たとえ、<人間の遺体>であってもな。

その時、ブーンと音を立て、機械が作動する。

破砕機シュレッダーではない。破砕機シュレッダーから繋がる装置の方だ。それにはまた別のところから太さ三十センチほどのパイプが繋がっていた。破砕機シュレッダーからだけでなく、他からも<材料>が供給されているのだろう。

そちらについても察しがつく。<生ゴミ>だ。

しばらく装置が動作した後、そこからビニールに封入された何かが出てきて、脇に置かれた籠へと落ちる。

ただの透明なビニール袋に入っているだけで他にはまったくパッケージと言えるようなものが施されていないが、その中身はよくある<栄養補助食品>として流通しているエネルギーバーに良く似たものだった。と言うか、見た目のままのエネルギーバーなのだろう。

つまりここにある機械は、

<人間の遺体や生ゴミを材料としてエネルギーバーを作る装置>

ということだな。

そしてそれは、

<人間の遺体すら食料に変えねばならんほどの世界>

であることを明確に示している。

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