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実にご立派だよ
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その後、あの<脱走者>がどうなったかは私は知らん。興味もない。
そんな私と変わらず、ここに暮らしている連中にも変化は見られなかった。
どうでもいいことなのだろう。
誰もが、自分が生き延びることで精一杯なのだろうな。
なんてことを考えながらある部屋に入ると、そこは例の<エネルギーバー製造機>が置かれた場所だった。
まああるのは分かっていたから今さらではある。
が、その時、
「ち…っ! またか……!」
私は思わず悪態を吐いた。部屋に入ってしばらくしたところで、そこにいたアシダカグモに遭遇してしまったのだ。
早々に距離を取り、振り切る。すると、ドアが開いて白衣を着た人間が二人、入ってきた。向こうの洋館にあったものを点検していた中年男と若造と同じように、ここの装置の点検をしに来たのだろうな。
と、僅かに気を逸らした隙に、再びアシダカグモに発見されてしまった。
「ええい! 鬱陶しい!!」
などと吐き捨てながら私は逃げる。
狭いところを逃げるよりも、三倍の速度で動けることを活かしてひらけた壁を走る。この方が確実に振り切れるからな。
そうして私が壁を走り抜けると、追ってきたアシダカグモが、突然、姿を消した。
いや、消えたのではないな。部屋に入ってきた白衣の人間が手にしたボロ布を器用に振って、アシダカグモを叩き落としたのである。
私は気付かれる前に走り抜けたが、奴はダメだったということだ。
で、床に落ちたアシダカグモを、白衣の人間は手袋をした手で掴み、そのまま例の装置の蓋を開けて放り込んでしまった。
いやはや、虫一匹無駄にしないとは、実にご立派だよ。
するとそこにさらに人間が入ってきた。もっとも今度は、ストレッチャーと一緒だったが。
そのストレッチャーの上には、裸の男が。一見しただけでも死体だと分かる肌の色。
生前とは少々人相が変わっているだろうからはっきりした年齢は分からないが、六十くらいといった感じか。
まあこうなると何が起こるのかはお察しだろう。
ストレッチャーを押してきた人間共は破砕機の蓋を開けて、死体の足を持ち、ストレッチャーの上を滑らせるようにして頭から押し込んだ。
手慣れた様子だ。
そして蓋を閉め、スイッチを入れる。
音は思ったほどじゃない。ウウウウと小さく唸りながら、やはり小さくバリバリとも音を立てている。死体が破砕されていく音だった。
さっき放り込まれたアシダカグモも一緒にな。
それら一連の作業を、先に入ってきたメンテナンス係と思しき二人組も、後からストレッチャーを押して入ってきた二人組も、一言も発することなく淡々と事務的に作業をこなしていたのだった。
そんな私と変わらず、ここに暮らしている連中にも変化は見られなかった。
どうでもいいことなのだろう。
誰もが、自分が生き延びることで精一杯なのだろうな。
なんてことを考えながらある部屋に入ると、そこは例の<エネルギーバー製造機>が置かれた場所だった。
まああるのは分かっていたから今さらではある。
が、その時、
「ち…っ! またか……!」
私は思わず悪態を吐いた。部屋に入ってしばらくしたところで、そこにいたアシダカグモに遭遇してしまったのだ。
早々に距離を取り、振り切る。すると、ドアが開いて白衣を着た人間が二人、入ってきた。向こうの洋館にあったものを点検していた中年男と若造と同じように、ここの装置の点検をしに来たのだろうな。
と、僅かに気を逸らした隙に、再びアシダカグモに発見されてしまった。
「ええい! 鬱陶しい!!」
などと吐き捨てながら私は逃げる。
狭いところを逃げるよりも、三倍の速度で動けることを活かしてひらけた壁を走る。この方が確実に振り切れるからな。
そうして私が壁を走り抜けると、追ってきたアシダカグモが、突然、姿を消した。
いや、消えたのではないな。部屋に入ってきた白衣の人間が手にしたボロ布を器用に振って、アシダカグモを叩き落としたのである。
私は気付かれる前に走り抜けたが、奴はダメだったということだ。
で、床に落ちたアシダカグモを、白衣の人間は手袋をした手で掴み、そのまま例の装置の蓋を開けて放り込んでしまった。
いやはや、虫一匹無駄にしないとは、実にご立派だよ。
するとそこにさらに人間が入ってきた。もっとも今度は、ストレッチャーと一緒だったが。
そのストレッチャーの上には、裸の男が。一見しただけでも死体だと分かる肌の色。
生前とは少々人相が変わっているだろうからはっきりした年齢は分からないが、六十くらいといった感じか。
まあこうなると何が起こるのかはお察しだろう。
ストレッチャーを押してきた人間共は破砕機の蓋を開けて、死体の足を持ち、ストレッチャーの上を滑らせるようにして頭から押し込んだ。
手慣れた様子だ。
そして蓋を閉め、スイッチを入れる。
音は思ったほどじゃない。ウウウウと小さく唸りながら、やはり小さくバリバリとも音を立てている。死体が破砕されていく音だった。
さっき放り込まれたアシダカグモも一緒にな。
それら一連の作業を、先に入ってきたメンテナンス係と思しき二人組も、後からストレッチャーを押して入ってきた二人組も、一言も発することなく淡々と事務的に作業をこなしていたのだった。
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