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簡単なお仕事
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まったくもって実に他愛のない任務。大して危険もなく一方的に射殺するだけ。
<銃殺刑>についても、執行役はこいつらだ。
<ただただ人間を殺すだけの簡単なお仕事>
いや、こいつらにとっては人間ですらないのか。なにしろ、<羊>だの<獣>だの言ってるくらいだしな。
が、そうは言っても全員が全員、例外なく割り切ることができないのも人間という生き物か。
割り切れてなくても、本当は納得もできてない仕事でありながら他に選択肢がないことで己の心を殺しながらやっている者もいる。
それでも、これまで通りなら、これまでと同じように何も考えず心を殺して任務だけをこなしていればよかったのだろう。
しかし、この日は違ってしまった。
「!?」
確実に全員死亡したことを確認していた隊員の一人が、ビクッと跳び上がりそうなほどに体を竦ませた。
「……?」
小隊長らしき男がそれに気付いて歩み寄ると、隊員の視線の先にあったのは。
「ち…っ。子供か……」
吐き捨てるように小さく声にする。会話は全て指揮所に伝わっている。だから指揮所にいる私にも届く。そして画像も見えている。そこに映っているもの……
そう。無数の銃弾を受け酷い有り様ではあるものの、間違いなく一歳前後の子供、いや赤ん坊だった。ここに集まっていた奴らの内の誰かの子供なのだろう。赤ん坊連れでテロ計画を練っていたのだ。
とは言え、この殺処分部隊の連中にとっても隔離区画の者共はただの<獣>。人間ではない。だからここで死んでいるのも<人間の子供>ではなく、<汚らしい獣の子>なのだ。そのはずなのだ。
「全員の死亡を確認。オールクリア」
隊員の一人が小隊長に告げると、
「状況終了。撤収します」
無線で指揮所に連絡を入れた。
子供が巻き込まれることも、決して多くはないがまったくないことでもない。だから経験を重ねている隊員なら、皆、
『そんなところにいる方が悪い』
『そんなところに連れてきた者が悪い』
と割り切ってしまえるのが普通だった。
なのに、この日は、初めて子供が巻き込まれる場面に遭遇したのがいたのだ。
「おい! 撤収だ!」
赤ん坊を最初に発見した隊員は呆然自失としていたが、そう声を掛けられてやっと動くことができた。
そしてまたエレベーターに乗って最下層へと戻り、指揮所に帰還する。
「テロリスト四名の死亡を確認。他、乳児一名も死亡。問題ありません」
小隊長が部隊長に告げると、
「ご苦労だった。ではこの八名については本日の任務は終了。ケアを受けた後、自室にて待機」
部隊長からの指示が出た。
殺しの任務があった時にはそれが終了とすると同時にその日は任を解かれ、専門家のケアを受けることになっていたのだった。
<銃殺刑>についても、執行役はこいつらだ。
<ただただ人間を殺すだけの簡単なお仕事>
いや、こいつらにとっては人間ですらないのか。なにしろ、<羊>だの<獣>だの言ってるくらいだしな。
が、そうは言っても全員が全員、例外なく割り切ることができないのも人間という生き物か。
割り切れてなくても、本当は納得もできてない仕事でありながら他に選択肢がないことで己の心を殺しながらやっている者もいる。
それでも、これまで通りなら、これまでと同じように何も考えず心を殺して任務だけをこなしていればよかったのだろう。
しかし、この日は違ってしまった。
「!?」
確実に全員死亡したことを確認していた隊員の一人が、ビクッと跳び上がりそうなほどに体を竦ませた。
「……?」
小隊長らしき男がそれに気付いて歩み寄ると、隊員の視線の先にあったのは。
「ち…っ。子供か……」
吐き捨てるように小さく声にする。会話は全て指揮所に伝わっている。だから指揮所にいる私にも届く。そして画像も見えている。そこに映っているもの……
そう。無数の銃弾を受け酷い有り様ではあるものの、間違いなく一歳前後の子供、いや赤ん坊だった。ここに集まっていた奴らの内の誰かの子供なのだろう。赤ん坊連れでテロ計画を練っていたのだ。
とは言え、この殺処分部隊の連中にとっても隔離区画の者共はただの<獣>。人間ではない。だからここで死んでいるのも<人間の子供>ではなく、<汚らしい獣の子>なのだ。そのはずなのだ。
「全員の死亡を確認。オールクリア」
隊員の一人が小隊長に告げると、
「状況終了。撤収します」
無線で指揮所に連絡を入れた。
子供が巻き込まれることも、決して多くはないがまったくないことでもない。だから経験を重ねている隊員なら、皆、
『そんなところにいる方が悪い』
『そんなところに連れてきた者が悪い』
と割り切ってしまえるのが普通だった。
なのに、この日は、初めて子供が巻き込まれる場面に遭遇したのがいたのだ。
「おい! 撤収だ!」
赤ん坊を最初に発見した隊員は呆然自失としていたが、そう声を掛けられてやっと動くことができた。
そしてまたエレベーターに乗って最下層へと戻り、指揮所に帰還する。
「テロリスト四名の死亡を確認。他、乳児一名も死亡。問題ありません」
小隊長が部隊長に告げると、
「ご苦労だった。ではこの八名については本日の任務は終了。ケアを受けた後、自室にて待機」
部隊長からの指示が出た。
殺しの任務があった時にはそれが終了とすると同時にその日は任を解かれ、専門家のケアを受けることになっていたのだった。
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