Gの愉悦

京衛武百十

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ただの渇望

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もっとも、スケジュール表を覗き見たところでそれだけでは何も分からんがな。私はあのアジア系の男の名前を知らんから。

とは言え、先に内容を知っておけば名前が判明した時にすぐに対処できる。

その時、私は自身目掛けて猛スピードで迫ってくるものの気配を感じ、身を躱した。

バシッと私がいた辺りの天井に何かがぶつかる。僅かに水飛沫も飛んだ。

水で濡らされたタオルだった。それを何者かが私目掛けて投げつけたのだ。

事務室にいた男だった。たぶん、スケジュールの確認をしていて私を見付け、タオル(いや、雑巾か?)を濡らして投げつけてきたということだな。

「ちっ!」

こちらもアジア系ではあったものの、例の男ではなかった。私が躱してみせたことで忌々しげに舌打ちをする。

床に落ちたタオル(雑巾)を拾い、再び投げる姿勢を見せたことで、私は早々に通風孔へと逃げ込んだ。

ここでやられてもつまらん。

こいつらに対しても逃げるしかできないのは事実だが、私が拘りたいのはあの洋館の男だ。奴には奇妙なシンパシーを感じてしまうのだ。

だから、合理的な理由などどうでもいい。とにかく私はあの男との決着を望んでいる。

これは論理的な思考ではない。ただの渇望だ。しかし、私にとっては、実は合理性や道理などどうでもいいものでしかない。その時その時に私の中に湧き出たものが全てであり、それが答えなのだから。

ゆえに、あの洋館に戻る機会を窺う。

そして三日後、ようやくその機会が訪れた。

あのアジア系の男が事務所に現れて、スケジュール表にタッチしたのだ。どうやら男はしばらく内勤だったようだが、また各施設の点検業務に出るらしいというのがそれで分かった。

しかしこれも、あの洋館を示す名称が分からない。さらに男はいくつかの施設を担当しているらしく、少なくとも三つの施設名らしきものが記されていた。

仕方ないので総当たりだな。とにかく男について行って、あの洋館に当たるまでだ。

まずは明日か。



翌日、私は先回りして例の宇宙服のような防寒装備をつけるロッカールームへとやってきた。

すると、男もすぐに現れる。

そして男が装備を取り出したところで、その中に素早く潜り込んだ。

以前、あの洋館からこちらに来た時のようにただ荷物に紛れ込んだだけでは、下手をすれば凍り付いて死ぬ。なので、防寒装備の中に隠れるのだ。

そこに、以前にも一緒に洋館で設備のチェックをしていたスラブ系の若造も遅れて現れたことが、声で分かった。

男の防寒装備の中の僅かな隙間に身を潜め、潰されないように気を付ける。

だが、おかげで温かさは十分だ。

後は、今回の行き先があの洋館であれば申し分ないのだがな。

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