Gの愉悦

京衛武百十

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ひとつ、よろしく……!

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翌日。再びあのアジア系の男の防寒装備に潜り込んで、私は洋館への帰還を目指した。

だが、今回も<ハズレ>。別の施設だった。今度は実にオーソドックスな<シェルター>という印象。味も素気もない。何となくムカついたので、糞をしていってやった。

まあ、ちっぽけなゴキブリの糞一個二個くらいならそれこそ服の毛玉が落ちているのと大して変わらんから嫌がらせにすらならんだろうが。

しかし、その<八つ当たり>の報いだったのだろうか……



またあの地下施設に戻った私だったが、

「くそっ! 虫が入ってやがる…!」

アジア系の男が防寒装備を脱いだ際に気取られてしまった。

男は、自分のロッカーに入れてあったスプレーを手に取り、防寒装備から飛び出してロッカーの隙間に潜り込もうとしていた私目掛けて噴射した。

幸いそれは殺虫剤ではなく消臭スプレーだったが、強いアルコールはゴキブリにとっても毒だ。僅かだが体に掛かり、ジリリと焼けるような感覚がある。

「おのれ! 人間め!!」

毒づいてみても今の私ではどうにもならん。とにかく逃げの一手だ。

男は、防寒装備の中に潜り込まれていたことがよっぽど腹に据えかねたのだろう。しつこく消臭スプレーを噴霧してくる。奥まで入り込んだ私には届かないものの、強いアルコール臭がして、神経に障る。

あの洋館の男との決着の後で、もし、機会があればこいつとも勝負がしてやりたくなった。

まったく、これでは死ぬに死ねんではないか。

人間ならそれも可能かもしれなくても、せいぜい二百日程度の寿命しかないゴキブリではそれも叶わない可能性の方が高い。ゆえに優先順位をつけるのだ。

とは言え、これで奴も用心するだろう。防寒装備の中に潜り込むのは難しくなったか。



そしてまた翌日。

案の定、アジア系の男は防寒装備の中に消臭スプレーを噴射して、ゴキブリが入り込んでいないかを確かめていた。

しかも、スラブ系の男の方も、

「虫とかマジかんべんッス」

と言いながら、同じように消臭スプレーを噴射する。

まあ、そうなるだろうなとは思っていたが……

一回目二回目であの洋館に辿り着けていればこんなことにはならなかっただろう。が、泣き言を並べても始まらん。

仕方なく私は、例のエネルギーバーを入れる袋に潜り込んだ。もしこれで死んだら無念ではあるが、それでも私自身が選んでしたことだ。おそらく、大丈夫だろう。

おそらく……

まあ、ダメだったらその時はその時だ。宇宙そのものが崩壊すれば、人間共も、自分が死んだことにも気付かずに一瞬で死ねる。たぶん痛みも苦しみもない。

そういうことで、ひとつ、よろしく……!

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