【受賞&本編完結】たとえあなたに選ばれなくても【改訂中】

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売

文字の大きさ
107 / 156

番外編 剣術大会<7>

しおりを挟む
今までアリシアはルーカスが剣を振るう姿を見ることがあまりなかった。

ルーカスは大会に出場することがなかったし、仕事中に遭遇することもなかったからだ。
訓練を見かけることはあってもそこでのルーカスも本気を出している感じではなかった。

「まぁ…」
アリシアの感嘆したような呟きにニキアスが反応する。

「アリシア夫人はルーカス公が戦っている姿を見ることはないだろう?」
「ええ。そんな場に出くわすこともありませんし、夫は私たちの前では一切剣を持ちませんから」

「あれは能ある鷹は爪を隠すを地で行くからな。ここにきてやっとその力を解放する気になったか」
どこかしら嬉しそうなニキアスの言葉にアリシアは不思議な思いにかられた。

ルーカスとニキアスのつき合いはニコラオスを失ってからだ。
時間としてはまだそう長いわけではなかったが、ニキアスの言葉からは彼がルーカスのことをよく理解していることがうかがわれる。

ルーカスのことを理解してくれる人が増えるのはアリシアにとっても喜ばしいことだ。

「ルーカス公はお前のことが鬱陶しいのではないか?」

そんな2人の会話に横からディミトラが口を挟む。

鬱陶しい。
ニキアスを捕まえての容赦ない言いようにアリシアは驚いた。

「そんなわけないだろう。私は良い上司のはずだ」
「上に立つ者はたいていみなそう思っているが、実際のところは鬱陶しがられていることも多いぞ」

ニキアスはショックを受けたふりをする。
2人の軽妙な会話を聞いて、やがてアリシアも理解した。
こういうやりとりが2人にとってのコミュニケーションなのだろう。

「お。ルーカス公が次の試合に出るようだ」
「逃げたな」
「誤解だよ、ディミトラ。見ればわかるだろう?」

ニキアスの言葉にアリーナの方を見ると、ルーカスとその対戦相手であろう若い騎士の姿が見えた。

「ああ。第1騎士団の若手か。たしか不満を抱いていた一人だな。まぁ実力の違いをその身で実感すればいい」
思わぬニキアスの冷めた言いように、アリシアはその真意をうかがう。

「誰しも現状に不満を抱くことはある。しかし相手の実力を見誤るようでは騎士としては二流だ」

そういえばルーカスが言っていただろうか。
ニキアス皇太子殿下は人格に優れ、公平で優秀な人だが人使いが荒い。
そして穏やかな物言いをしながらも求めてくるもののレベルが高いと。

そういう考え方の人にとって、実力も伴わないにも関わらず文句を言う者は論外ということなのかもしれない。

「やはりあっという間だな。ルーカス公はあの場から一歩も動いていないんじゃないか?」
呆れたようにニキアスが言い、
「そうだな。前回同様圧勝だ。一振りで終了とは、騎士団の連中はそろいもそろって能力が低いんじゃないか?」
その言葉を受けてディミトラが答える。

夫婦の辛辣なやりとりに、アリシアは賢明にも口をつぐんだ。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

もう演じなくて結構です

梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。 愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。 11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。   感想などいただけると、嬉しいです。 11/14 完結いたしました。 11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

【完結】愛してました、たぶん   

たろ
恋愛
「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。 「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。

たろ
恋愛
大好きな貴方はわたしを裏切り、そして殺されました。 次の人生では幸せになりたい。 前世を思い出したわたしには嫌悪しかない。もう貴方の愛はいらないから!! 自分が王妃だったこと。どんなに国王を愛していたか思い出すと胸が苦しくなる。でももう前世のことは忘れる。 そして元彼のことも。 現代と夢の中の前世の話が進行していきます。

処理中です...