最果ての僕ら

雲沢 あしか

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prologue

最果ての彼ら

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 千葉県にあるとある終点駅のその先に、最果学園前駅が出来たのは十年前の話だ。そこは海まで遠くない駅だったものだから、最果学園前駅に至っては元々海だった場所に建てられている。埋立地は駅と線路に必要な分しか造られていないため、見える景色は限られていた。雄大に広がる真っ青な海に切れ目の見えない空、ゴツゴツした岩や陸地に通じている小さな橋、自然は豊かだが若者が楽しめるような娯楽はほぼ無かった。
 そもそも最果学園前駅には娯楽など必要ないのかもしれない。駅の利用客は毎日変わらないからだ。この駅には一般人は近づかない。田舎には似合わない綺麗な駅舎ではあるが、この駅に降り立つのは最果学園の学生たちとその教師陣だけである。学生寮が校舎に併設しているので、学生たちだって休日にしか利用しない。
 最果学園前駅は名前の通り、最果学園のすぐそばにある。最果学園は、生徒が全国全学年合わせても40~50人ほどしかいない『超能力者』の為の寮付きの学校だ。現在は千葉県にある関東校には10期生、東北校には9期生、九州校には8期生が在籍している。
 超能力者とは、文字通り超常的な力を持って生まれる人間のことを指している。普通の人間が出来るはずもない驚異的な力は、超能力者が受け入れられていない原因だろう。また、生まれるといっても赤ん坊の時から超能力者と呼ばれることになった人間は一人しか確認されていない。皆が皆、人生の途中で超能力に目覚めるのだ。中学生までに力に目覚めてしまうか、それすら叶わず力が暴走し、『ナレノハテ』と呼ばれる化け物に変貌してしまうかのどちらかだった。これも、超能力者が世間から浮いている理由の一つだ。能力を最果学園によって管理されていないものは、力の暴走により化け物になってしまうことがある為、超能力者であることがバレればどちらにせよ今まで通り暮らすのは不可能だった。そして学園に来た超能力者にはある義務が課せられる。それは、『ナレノハテ』の駆除だった。いわゆる一般人に超能力者は害を持たないと証明するために、元は人間だった化け物を若き少年少女の手で殺させる。成人を越し能力が消滅し次第命を落とす寿命の短さでありながら、その障害を化け物退治、同胞殺しに費やさなければならない彼らのことを、人々は哀れにも『ナリソコナイ』と呼んだ。
 これは、彼らの生涯の物語である。
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